双子姉妹 夢の消防士へ30kmの夜間強歩訓練 最後にあふれた涙の意味は=静岡

人の役に立つ消防士になりたい。子どもの頃からの夢を叶えて消防士になった19歳の双子の姉妹がいます。現在は消防学校で訓練を受ける毎日ですが、猛暑に見舞われた8月上旬、約30kmの道のりを夜通し歩き続ける訓練が行われました。厳しい訓練に立ち向かう二人の姿を追いました。

【写真を見る】双子姉妹 夢の消防士へ30kmの夜間強歩訓練 最後にあふれた涙の意味は=静岡

<杉村直美カメラマン>
「こんにちは。夕方5時すぎですけど、今日はどこに?」

<姉・久保田紗里奈さんと妹・優里奈さん>
「これから第2回野外訓練に行きます」「最後まであきらめずに頑張るぞ」

駿東伊豆消防本部の新人消防士、久保田紗里奈さんと双子の妹の優里奈さんです。2人は一浪して消防士の試験に合格。いまは静岡県消防学校で消防の技術や規律を学んでいます。

<県消防学校 望月竜之介教官>
「お前たちは消防士という仕事を選んだ。絶対にお前たちも大規模災害で活躍する日が来る。全員で完歩しろ。いいか」

<学生>
「よし」

うだるような暑さの8月3日木曜日。この日、行われたのは、被災地まで徒歩で行くことを想定した夜間強歩訓練です。富士市のマリンプールを出発して、海沿いの堤防を歩き、被災地に見立てた消防学校まで約30kmを歩きます。

出発時間は午後7時。被災者をいち早く助けるため、夜通し歩き続け、翌朝の到着を目指します。ホースなどの資機材を入れた約20kgもある荷物を背負っていくのは、かなりの負担です。

歩き始めて約4時間。深夜ともなると…あくびも。

<姉・紗里奈さん>
「時々ちょっと辛くなるんですけど、みんなが応援してくれるし、まだまだ歩かなきゃならないので頑張ろうって思えます」

一番の難所、薩捶峠の上り坂です。優里奈さん、仲間と共に何とか乗り越えようと、必死に食らいつきます。

<姉・紗里奈さん>
「大丈夫?」

<同期>
「OK」

<姉・紗里奈さん>
「ありがとうございます」

一方、姉の紗里奈さんも、仲間に支えられて踏ん張ります。

4日午前5時すぎ。妹の優里奈さんが到着。2人とも歩き通すことができました。しかし…。

<県消防学校 望月竜之介教官>
「最後まで力を出し切って、要救助者を救出する」

学校にたどり着くまでが訓練ではありません。被災地に見立てた消防学校で、被災者を助けるまでが訓練です。

<姉・紗里奈さん>
「お願いします」

<妹・優里奈さん>
「誰かいますか」

何とか訓練をやり遂げました。

<県消防学校 望月竜之介教官>
「お前たちみたいな気持ちの強い消防士が、大規模災害で活躍する。楽しいことはすぐに忘れる。苦しかった、辛かったことは一生忘れない。この辛かったことを一生忘れるな、いいか」

<学生>
「よし」

<妹・優里奈さん>
「最後まで出来てよかったです」

<姉・紗里奈さん>
「同じ班の人とか、同じクラスの人が頑張ってって応援してくれて、みんなの支えがなかったらここまで来れてないと思うので」

一歩ずつ歩みを続ける、紗里奈さんと優里奈さん。この日、2人が流したのは、立派な消防士になるための誓いの涙です。

© 静岡放送株式会社