下水汚泥肥料推進へ「情報公表で安全性担保」 農水省、国交省がシンポジウム

農水省と国土交通省は8日、下水汚泥の肥料利用を推進するためのシンポジウムを、東京都内で開いた。利用拡大には、汚泥の安全性や肥料成分量など品質を担保することが重要だとして、各省や自治体が取り組みを発表。山形県鶴岡市は毎月、下水汚泥堆肥に重金属が含まれていないかを分析・公表していると説明した。

同市は、浄化センターから出る下水汚泥の発酵堆肥「鶴岡コンポスト」を紹介した。堆肥の安全性を示すため、水銀、ヒ素、カドミウムなど重金属8成分を毎月分析し、ホームページで結果を公表している。年6回、重金属の流入源となる水源の分析もする。堆肥の生産・販売はJA鶴岡が担い、年間生産量は約550トン。増産の要望もあると報告した。

神戸市は、市民の理解醸成に力を入れていると説明。下水汚泥から回収したリンを「こうべ再生リン」と名付け、子ども向けに、回収リン入り肥料を使ったトウモロコシの収穫体験などを開いているとした。回収リンは年間78トン(2022年度)を肥料メーカーに出荷している。

農水省は、策定を進める下水汚泥由来肥料の新規格「菌体りん酸肥料」について説明。成分分析でリン酸含有量を保証することで、農家が施肥設計しやすく、使いやすい規格になるとした。他の肥料と混合でき、不足成分を補える。

国交省によると、国内で年間約230万トンの汚泥が発生し、肥料利用は約1割にとどまる。同省は、各地の事例集や肥料利用の手引を作る計画だ。 古田島知則

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