お盆の帰省をめぐり、首都圏の大学に通う地方出身の学生たちは苦しい選択/岡山県

お盆の帰省をめぐり、首都圏の大学に通う地方出身の学生たちは苦しい選択を余儀なくされた。東京では新型コロナウイルス感染拡大が止まらず、全国知事会は慎重な判断を呼び掛けた。岡山県にゆかりのある男子大学生のための寮「鶴山館」=東京都西東京市=では、全員が東京に留まることを決めた。
「帰省したい気持ちはあるが、自分だけの問題ではないので、仕方ないですね」。岡山県津山市山方出身で、寮長の専修大法学部4年・北川大河さん(21)はそう話す。「みんなで話し合い、なるべく帰省は避けようという話になった。最終的には個々で判断した。みんな協力してくれるのでありがたい」。
鶴山館では学生が自治会を組織し、共同生活を送っている。県北出身の学生を中心に24人が在籍しているが、このうち1年生の6人は入寮できないまま。ロビーの椅子を減らし、食事の際も間隔を空け、除菌、手洗い・うがいの徹底、毎朝の検温など、学生たちでコロナ対策に取り組んできた。
4月に入学してから一度も学校に行っていないという岡山県久米郡美咲町打穴中下出身で、学習院大法学部1年の松田侑大さん(18)は、「オンライン授業だけなので人間関係が広がらず、外出を控える毎日は正直いってつらいですね」と悩みを打ち明ける。「ただ鶴山館は人間関係が良好で、先輩方が良くしてくれるのでありがたい」。
北川さんも「就職活動があり、なんで(コロナ発生が)今なの、という気持ちはある」と苦しい胸の内を吐露。「寮の新型コロナ感染症対策、帰省のことも含め、濃い半年でした」と振り返る。
「みんな家族や友だちのことを考え、生活している。大切に思うからこそ、東京で頑張りたい」
公益財団法人鶴山館(頃安健司理事長)は寮生全員に支援金5万円を給付した。岡山県OB会は、作州牛を贈る予定。高原清隆会長(69)=津山市=は「1年生が特に心配。4月に東京に行って、初の帰省は僕にとっても特別だった。どうか元気を出してほしい」と話していた。
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寮長の北川さん(左)と、松田さん=鶴山館の食堂で

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