【連載コラム】第24回:MLB公式サイトに「三冠王ウォッチ」の特集ページが登場 大谷三冠王の可能性は?

トレード・デッドラインで買い手に回ったにもかかわらず黒星を重ね、エンゼルスがズルズルとプレーオフ争いから後退していくなか、米メディアの注目ポイントは「エンゼルスのプレーオフ争い」から「大谷翔平の個人記録」へと移り始めています。

日本時間8月8日にはMLB公式サイトに大谷三冠王の可能性を追う特集ページが登場。打撃3部門の現在の順位や本塁打ペースが紹介されています。おそらく打率や打点でトップの選手から大きく引き離されることがない限りは、シーズン最終盤までこのページが日々更新されていくことになるのでしょう。

では、実際に大谷が三冠王に輝く可能性はあるのでしょうか。日本時間8月8日の全試合が終了した時点で、大谷は打率.308、40本塁打、82打点を記録。本塁打は2位のルイス・ロバートJr.(ホワイトソックス)に10本差をつけており、故障で長期離脱するようなことがない限り、タイトル獲得は当確と言えるでしょう。

本塁打に関しては、タイトル争いよりも昨季アーロン・ジャッジ(ヤンキース)が樹立したシーズン62本塁打のリーグ記録への挑戦が気になるところ。昨季のジャッジはチーム114試合目までに46本塁打を放っていましたが、大谷はチーム114試合目で40本塁打。これは162試合に換算すると56本ペース(小数点以下切り捨て)となります。日本人選手初のシーズン50本塁打と、同じく日本人選手初の本塁打王獲得は十分にチャンスがありますが、ジャッジの記録に挑戦するためには、ここから少しずつペースを上げていきたいところです。

次に、打点部門を見ていきましょう。大谷は現在82打点で2位につけており、1位のアドリス・ガルシア(レンジャーズ)とは7打点差となっています。決して追いつけない差ではありませんが、大谷が7~8月で10本塁打を放ちながらも15打点にとどまっているのに対し、ガルシアは同期間に9本塁打、23打点を記録。ガルシアはレンジャーズの強力打線のなかで、塁上にランナーを置いて打席に入る機会が多く、今季ここまで敬遠0という数字が示すように、勝負を避けられるケースもほとんどありません。

一方の大谷は、チャンスの場面では勝負を避けられることが非常に多く、結果として本塁打もソロばかり。これではいくら本塁打を量産しても打点は増えていきません。大谷の背後には3打点差でラファエル・デバース(レッドソックス)とジョシュ・ネイラー(ガーディアンズ)が迫っており、大谷がガルシアに追いつく可能性よりも、大谷がデバースやネイラーに追いつかれる可能性のほうが高いのではないでしょうか。

最後に、最大の難関とも言える打率部門を見ていきます。現在のランキングはボー・ビシェット(ブルージェイズ)が.321でトップ、ヤンディ・ディアス(レイズ)が.315で2位、そして大谷が.308で3位となっていますが、打率ランキングに登場しない強敵がいることを忘れてはいけません。コリー・シーガー(レンジャーズ)が規定打席不足ながら.349のハイアベレージを残しているのです。162試合の規定打席は502ですが、シーガーは残り49試合で平均3.7打席をこなしていけば規定打席に到達できます。よって、シーガーの3度目の故障者リスト入りがないと仮定すれば、シーガーの打率が落ちてこない限り、大谷だけでなく、ビシェットやディアスもノーチャンスです。

MLB公式サイトに特集ページが登場した大谷ですが、少なくとも現時点では三冠王の可能性は低いと言わざるを得ないでしょう。残り48試合、三冠王にどこまで迫れるか注目したいと思います。

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