8月10日に幕を開けるWUBS(Sun Chlorella presents World University Basketball Series=ワールド・ユニバーシティー・バスケットボール・シリーズ)の初日に行われるエキシビジョンで、ディフェンディング・チャンピオンのアテネオ・デ・マニラ大(フィリピン)と対戦する2023年度 WUBS日本学生選抜チーム(以下WUBS学生選抜)が、その前日となる9日に公開練習を行った。池内泰明氏(拓殖大)がチームリーダーを務め、松藤貴秋氏(中京大)がヘッドコーチとして率いる今回のチームは、WUBSで日本のファンの前でプレーした翌日からチャイニーズ・タイペイに飛び、ウイリアム・ジョーンズカップで8試合を戦うことになっている。
☆WUBS Opening Night
WUBS学生選抜 vs. アテネオ・デ・マニラ大(フィリピン)
開催日時: 8月10日(木) 19:00~
試合会場: 国立競技場代々木第二体育館
※WUBS学生選抜メンバーは大会公式サイトでご確認ください
松藤HCは、6日まで成都(中国)で開催されていたFISUワールドユニバーシティゲームズ(以下ユニバ)で男子U22日本代表のチームリーダーも務めており、帰国直後に異なるメンバーながら同年代の学生選抜を率いている。ユニバでの戦績は1勝5敗の12位。U19日本代表が、6月下旬から7月初頭にかけてのFIBA U19ワールドカップ2023で8強入りを果たす大躍進を見せた後だけに、「フィジカル面でもバスケットの質でも全然差があった」と語る松藤HCの言葉からは、大学生世代の強化に課題が山積していることを痛感させるものだった。
その現状を踏まえ、WUBSでのエキシビジョンは、この世代の世界基準到達への扉を開くような位置づけの試合と言えそうだ。
この日の公開練習は、実質的に選抜メンバーが初めて全員そろう機会だったとのこと。そのためプレーヤー同士の関係性の構築もまだまだこれからという段階でもあるようだ。ディフェンスなしでオフェンスのグラウンドルールを確認するドリルでは、お互いの連係がかみ合わず動きが止まってしまう場面もあった。ただ、終盤のフルコート5対5のスクリメージでは、硬さもほぐれてきたか、攻守ともスピード感に満ちた好プレーが次々と飛び出していた。準備期間は十分とは言えないが、松藤HCは実戦を通じての成長に期待を寄せる。チームとしての完成度では勝るであろうアテネオ・デ・マニラ大との一戦で、まずはこの学生選抜のポテンシャルをしっかり感じさせることが重要になりそうだ。
岩本悠太の豪快なスラムダンク(写真/©月刊バスケットボール)
以下は松藤HCとの一問一答。大学生世代での課題、WUBS参戦の意義、この世代の将来的な展望など、興味深い話を聞かせてくれている。ご一読いただいた上でWUBSでの学生選抜の奮闘を見守っていただければ、試合の面白みが大幅に増すに違いない。
☆Sun Chlorella presents World University Basketball Series大会公式サイト
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\--{アグレッシブなアテネオ・デ・マニラ大にリバウンド、ルーズボールで絶対に負けたくない}--
アグレッシブなアテネオ・デ・マニラ大にリバウンド、ルーズボールで絶対に負けたくない
WUBS学生選抜の松藤貴秋HC(写真/©月刊バスケットボール)
――この大会に参加する意義はどのように感じていますか?
WUBSは本当に貴重な大会になると思っています。フィリピンのアテネオ・デ・マニラ大とできるというのは、本当楽しみにしていました。コロナもあって、なかなかこういう機会もなかったので大変貴重な強化の機会になっています。何とか勝ちたいというのが本心です。
――相手のスカウティングはどのくらいできていますか?
あまりできてないです。海外のサイトを探して、過去のゲームだったり去年のゲームを見たりはしていますけれど…。
気になる選手たちはある程度見ています。ただやっぱりフィリピンは伝統的に1対1が強かったり、Bリーグに来ている選手を見ても気持ちが強いと思うので、そういう相手に呑まれないように戦いたいなと思っています。
――練習としては何回目ぐらいになるんですか。
前回、6月の終わりぐらいに1回集まっているんですが、そのときは初対面のような状態でしたし、小澤選手(小澤飛悠[日体大1年])もU19に招集されて参加できませんでした。その後エントリー変更もあったので、全員がそろうのは実質今日が初めてです。
だからやっぱり、まだまだ人間関係もできていなくてちょっと硬いんですよ。それでも明日試合があり、明後日からジョーンズカップに飛びますので、本当に毎試合ステップアップしていく必要があります。
――実戦を通じて一つになっていくというわけですね。
そうです。私にとっても勉強です。選手たちも、これから例えばBリーグに行くとなれば、試合ごとの変化にアジャストする能力も必要なので、WUBSとジョーンズカップは、実戦で修正して成長していくことが大事かなと思います。
――明日の試合で特にここは負けたくないというポイントはどこですか?
リバウンドやルーズボールですよね、やっぱり。そこで負けるとゲームに直結しちゃうと思うんです。やっぱりニュートラルなボールをしっかり獲れるか、リバウンドをしっかり獲れるかというところは意識したいですね。そのためにはしっかり体を当てるとか、パンプするとか、ペイントでファイトするということになります。
――今日の練習で、手応えとしてはいかがでしたか?
練習ができてないので、やっぱり細かいところがまだ詰められていないので、私達の求めるレベルは当然来ていないんですけど、私が思っていたよりはずっといい状態です。初回にしては非常にいいと思うので、そのいい部分をもうちょっと引っ張り上げていけるようにしたいですね。
あんまりガチガチに、ヘッドコーチの顔色を伺いながらやるようなチームではなくて、自分たちでコミュニケーションをしっかりとってやっていくような準備をしたいです。選手の力を引き出す方向性で、私のやりたいバスケットをやらせるのではなく、選手たちのよさを引き出していきたいです。難しい約束事を組んでいくには時間がありません。その場その場で選手たちが判断したり、コーチとしても彼らが自分たちでやりやすい方を選ばせてあげられるようなバスケットをしたいなと思います。
明日の試合は適応力を試されるようなところもあると思います。前半と後半で修正が必要になることもきっと出てきます。彼らは皆、普段40分出ている選手だと思いますが、代表チームになると、1~2分でもとか、1回交代してとか、そういう経験の機会になると思います。ただ、その代わり40分間しっかりちゃんとファイトできて質が落ちない、体力切れにならないような選手を常にコート上に送り続けるというのが大事だと思うんです。
ミスマッチの1対1ドリルで対峙する月岡 煕(日体大2年=左)と介川アンソニー翔(専修大1年=右)。1対1一つにしても工夫が感じられる練習だった(写真/©月刊バスケットボール)
――このチームの活動は将来のA代表につながるものでもあります。今の日本代表のプレースタイルを意識されるようなところもありますか?
はい、日本代表のトム・ホーバスHCがやっているファイブアウトを取り入れています。ユニバーシアードも同じセットを使っていましたが、今回のチームでも取り入れています。
当然、すべてが同じではありませんが、ホーバスHCともコミュニケーションをとらせてもらいながら、考え方とかエッセンスを我々の世代でも取り入れています。センターもやっぱり3Pショットを打てますし、そういうことも将来のA代表に繋がっていくという意味でやっています。
――5対5のスクリメージでガードの選手たちがしきりに「ナゲッツ!」、「ナゲッツ!」とコールしていました。それもファイブアウトのプレーなのですか?
そうです。センターが外に出てきて、オフェンスのきっかけを作るプレーなんですよ。(A代表のファイブアウトとは)少し変えていますけど、エッセンスを取り込んで、例えば最初のパス、二つ目のパスぐらいまでは同じでも、それ以降のオプションは違う展開になっていきます。やはりすべてを完成させる時間はありませんが、1回目の練習で本当によくできていると思います。そういうエッセンスを入れるだけでも、選手たちが「A代表はこういうことだったんだ!」と想像を広げられるとも思います。こうした取り組みで、「自分たちが次のユニバへ、さらにその次に」みたいな意識を持てると思っています。
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