沿線住民の思いが形に!復刻カラーの市電が札幌市内を駆け抜ける

失われてしまったツートンカラーの札幌市電。かつて定番だったあのカラーリングを復活させようと始まったクラウドファンディングが、当初の目標金額を大きく上回り達成。札幌市電240形243号車が往年のカラーに復刻しました。2024年5月まで運行予定となっています。

札幌市民の心に残る、懐かしのカラーリング

「デザートクリーム」「ライトグリーン」からなるツートンカラーの車両は1950年代に運行を始め、全車ワンマン化が完了した1970年代には車体中央のラインが赤色から白色に変更。ポップな色使いながら、街の風景にすっかり溶け込む姿が記憶に刻まれている人は少なくありません。かつては市電の定番カラーでしたが、老朽化により次々と新しい車両に入替り、2021年に最後のツートンカラー車両が引退しました。

復刻塗装された240形243号車

山あり谷ありの募集期間。市電沿線で暮らす人たちも後押し

懐かしい街の風景を蘇らせようと立ち上がったのは、道内の鉄道愛好家でつくる「北海道鉄道観光資源研究会」(永山茂代表)。しかし、目標達成までは必ずしも順調ではなかったそう。

「プロジェクト開始直後は思ったように伸びず、不安や焦りがありました」と話すのはメンバーで街歩き研究家として知られる和田哲さん。後半戦が始まるにあたり、沿線住民や商店へのポスティングといった草の根運動に力を入れ、札幌市交通事業振興公社の協力により貴重なリターン品も新たに提供されました。

復刻カラーの市電に並ぶ和田さん

目標金額を大きく上回り達成!

多くの人々の尽力により、2023年5月のクラウドファンディング立ち上げから約2カ月で当初の目標金額550万円を大きく上回る約724万円を集めて達成しました。「鉄道ファンだけでなく、地元の人々の市電に対する思いを実感しました」とプロジェクト関係者。支援者の約1割は札幌市中央区で暮らす人々だといい、中には耳の不自由な方からハガキで支援方法を相談されたこともあったそうです。

「ワンマンカー」を示す白帯も再現

細部にまで徹底的にこだわった再現塗装

これまでの修繕・改修により、正面窓下の前照灯が単眼から二眼に変更されるなど車体のディティールは変わっていますが、カラーリングは可能な限り再現したのがこだわりです。正面右下にある白字で書かれた「2」は、かつて鉄板だった系統表示板を再現したもの。V字は二眼ライトでも単眼時代と変わらない印象になるよう、何度も修正しながら角度を調整したそうです。

「昔ながらの色の市電と再開発が進む町並みのコントラストを楽しんで欲しい」と和田さんは話します。

細部にこだわったディティール。右下の数字が系統表示板の再現

ラスト1年、最後の市電定番カラーを目に焼き付けよう!

2023年8月1日に行われたお披露目走行では、街歩き研究家・和田哲さんの招待で、沿線で暮らす子どもたちが乗車。沿線や市電の歴史を解説し、子どもたちは耳を傾けました。沿道にはたくさんの市電ファンがカメラを構える姿、中には「プロジェクト達成おめでとう」と手製のパネルを掲げる人の姿も。札幌市電が多くの人々に愛されていることを実感しました。

和田さんの説明に耳を傾ける子どもたち

リバイバルカラーの市電は当初2024年4月までとしていましたが、多数の支援を受け5月10日まで運行延長が決定しました。243号は一般車両として札幌の街を走り抜きその後引退になりますが、期間中はイベント運転も予定しており、貸し切りも可能です。古くからおなじみだった札幌カラーの市電の最後の1年が始まります。

現在のグリーンカラーの車両(写真左)と復刻カラー(写真右)

ライタープロフィール

雑誌・書籍編集者&ライター 山下 恭平

ラジオ局で番組制作の仕事をしながら、ミニコミ誌の制作や雑誌のライター業を始める。その後、編集者として出版社に入り、タウン情報誌をメインにさまざまな記事を手掛けてきた。好きなことは料理、山登り、川釣り、札幌の石碑。札幌市南区在住で、南区をこよなく愛している。

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