林原、ナガセヴィータに社名変更 24年4月1日付 本社移転なし

新社名を発表する林原の安場社長(右)と長瀬産業の上島社長

 バイオ企業・林原(岡山市北区下石井)は10日、社名を「ナガセヴィータ」に来年4月1日付で変更すると発表した。化学品専門商社・長瀬産業(東京)グループでバイオ事業の中核を担う企業としての存在を明確化する狙い。1883(明治16)年に「林原商店」として創業、140年の歴史を持ち、天然糖質トレハロースなどの独自商品で知られる老舗企業が、新たな歴史を踏み出すことになる。

 本社の移転はなく、岡山市と京都府福知山市の全7工場や、社員約800人の雇用は維持する。社名はラテン語で生命や暮らしを意味する「Vita(ヴィータ)」にちなむ。英語表記は「Viita」で、二つ並んだ「i」を向き合う人に見立て、「人と自然が共生する未来を、皆で共創する」との思いを込めたという。林原美術館(岡山市北区丸の内)の名称は変わらない。

 岡山市内に林原の社員を集め、安場直樹社長、長瀬産業の上島宏之社長らが会見。社名変更の狙いや、グループの連携を強化して林原の商品を医療や工業といった幅広い領域に展開していく構想などを説明した。

 安場社長は「慣れ親しんだ名前が変わることに社員も不安はあると思うが、新たな価値観で挑戦する。従来の食品分野に加え、生活全般や地球環境にも貢献できるよう技術を磨いていく」と強調。上島社長は「バイオ分野は世界で関心が高まっている。ナガセヴィータがグループの成長のけん引役となることを期待している」と述べた。

 林原は、微生物がつくる酵素を活用した新素材開発が強み。不適切経理の発覚で2011年に会社更生法を申請し、翌12年に長瀬産業の傘下に入った。今年4月には、長瀬産業グループの化学品メーカー・ナガセケムテックス(大阪)から生化学品の製造事業を承継するなど、グループ内で役割が増している。

© 株式会社山陽新聞社