<社説>ゆいレール20年 交通の要として発展を

 沖縄都市モノレール(ゆいレール)の開業から20年の節目を迎えた。県民や観光客の足として定着したゆいレールは戦後、沖縄で初めて整備された軌道系の公共交通機関だ。需要増に対応するため、10日から3両編成の運行が始まった。沖縄の公共交通網の要の一つとして発展し続けることを期待したい。 開業前と比べると街並みは様変わりした。駅整備は周辺の再開発の呼び水となり、地価も上昇した。県民の公共交通への向き合い方も変化した。始発や終電の意識が根付き、仕事や夜の会合で帰宅時間が遅くなっても、ゆいレールの運行に合わせ時間管理をするようになった。生活習慣の変化をもたらしたのだ。

 2003年8月10日の運行開始後、数年は乗客数が伸び悩んだが、利用を呼びかける周知活動を展開し、開業10年後の13年には1日平均乗客数が4万人を超えた。19年に過去最高の5万5766人を記録した。20~22年のコロナ下は利用者が激減したものの、行動制限の緩和で徐々に客足が戻り、23年4月~7月は5万人台に回復した。

 3両編成の運行によって混雑緩和を図り、インバウンド(訪日客)需要の増加も見込んでいる。23年度内には延べ乗客数3億人、7年後の1日平均乗客数は7万2千人を予測しており、県民や観光客の交通手段として欠かせない存在になっている。

 ただ、沖縄都市モノレール社を取り巻く経営環境は厳しい。3両編成の運行に伴う設備投資や修繕費などが財務を圧迫することは避けられない。モノ社は20年度に27億円の債務超過をDES(貸付金の株式化)によってほぼ解消したが、経費がかさみ22年度の決算で14億9千万円の債務超過に陥った。

 県の行財政を監査する23年度包括外部監査の報告は、モノ社の長期的な債務超過体質を厳しく指摘している。3両化を果たしてもモノ社独自の経営努力のみでは抜本的な経営健全化には不十分だとして、県に積極的な施策の実施を求めている。当然の指摘だ。

 鉄道事業は初期投資が膨大で開業後30~40年を経てようやく累積赤字を解消できるとされる。モノ社も開業時の借り入れ約320億円の返済負担が重く、資金繰りは厳しい。コロナ禍からの回復がみられる今、県を挙げて利用拡大を図り、経営を軌道に乗せる取り組みが不可欠だ。

 通勤通学や外国人観光客による従来の客層に加え、「てだこ浦西駅パークアンドライド駐車場」の活用で、中北部からの需要の掘り起こしも求められる。路線バスとの連結でさらに利便性を高めることは必須だ。

 県や国は、西原町や宜野湾市などへの延伸を検討するとともに、沖縄振興の起爆剤として敷設が期待される沖縄縦貫鉄軌道との連結も視野に入れ、沖縄の公共交通の未来を描いてほしい。

© 株式会社琉球新報社