刑務所に入っている人の5割が依存症!?刑期を終えても再犯率が高いのはなぜか【図解 依存症の話】

刑罰では依存症を治せない

刑罰を科せられるとわかっていてもやめられない依存症もあります。一番わかりやすいのは違法薬物ですが、それだけではありません。物を盗みたいという衝動や欲求を抑えられないクレプトマニア(窃盗症)や、法にふれるリスクを冒しても性犯罪を行う性嗜好障害(痴漢や盗撮など)も疾病です。法務省が全国の刑務所及び拘置所の被収容者などに関する統計資料を集計した2021年の矯正統計調査によると、入所者の中で窃盗、 薬物事犯、性犯罪の合計が半数を超えます。もちろん、これらの犯罪で服役している全ての人が依存症とはいえません。しかし、受診をすれば依存症と診断される人が多いのではないでしょうか。

ここで考えなければならないのは、依存症は疾病なので刑罰では治せないということ。誰かに損害や危害を加えたら罰せられるのは当然ですが、犯罪者として扱われる恐れから、治療を受けずに重症化させてしまうケースも少なくありません。再び同じ罪名で入所する人の割合は、窃盗と薬物事犯で8割近くにのぼっています。このことから、刑期を終えてもケアをしっかり行わなければ、何度も同じ罪を繰り返す可能性が高くなるのです。つまり、犯罪へと突き動かしているのが依存症という事実に気付かないと、本人はもとより社会全体にとっても大変不幸なことといえます。

刑務所に入っている人の多くは依存症の可能性がある

あまり知られていませんが、受刑者の半数以上は依存症が疑われる窃盗、薬物事犯、性犯罪で占められています。

在所受刑者の罪名別割合

窃盗・・・27%
藥物事犯・・・25%
性犯罪・・・5%
その他・・・43%

最も多いのが窃盗で2番目は薬物事犯

窃盗、薬物事犯、性犯罪だけで、服役者の約5割を占めます。全員が依存症とは断定できませんが、その他に含まれる傷害に飲酒が影響している可能性もあります。

刑罰を与えても解決しない!必要なのは治療

窃盗、薬物事犯は、刑期を終えても再び同じ罪を犯して刑務所に戻る確率が非常に高いことがわかっています。

窃盗

前刑の人数・・・3,468人
再入者の人数・・・2,689人
再入者率約77.5%

藥物事犯

前刑の人数・・・2,863人
再入者の人数・・・2,351人
再入者率82.1%

再犯率の高さからも依存症の疑いが濃厚

注目すべきは刑務所への再入所率の高さ。窃盗では4人に3人、薬物事犯では8割を超えています。再犯者の中には、自分が依存症だと気付いておらず、治療を受けていない人も多いと考えられます。

性犯罪も3割以上が再犯している!

3割という数値は一見高くないように思えますが、他の依存症と違い、被害者への精神的な影響が大きいのが性犯罪。繰り返さないためには適切な治療を受ける
必要があります。

出典:『短時間でしっかりわかる 図解 依存症の話』大石 雅之

【書誌情報】
『短時間でしっかりわかる 図解 依存症の話』
大石 雅之 著

特定の物質や行動をやめたくてもやめられない病の「依存症」。スマートフォンの普及や時代の変化にともない、依存症の種類も多様化しました。「スマホ依存」「ゲーム障害」などの言葉は、テレビやインターネットのニュースで目にする機会も増え、社会問題として注目されています。依存症は一度症状が出てしまうと完治が難しい病気です。本書はその依存症について具体例を交えながら、依存する人としない人の違いや依存症の進行の仕方、依存症が起こるメカニズムなどを、メンタルマネジメントや環境、生活習慣の観点から図解でわかりやすく解説。

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