子どものけが防ぎたい 和歌山・みなべで元球児の高校教諭が運動教室

野球の初心者に向けた道具を使って子どもを指導する吉水智章さん(和歌山県みなべ町西本庄で)

 和歌山県みなべ町西岩代の高校教諭、吉水智章さん(38)は、町内を中心に、小学生以下とその保護者らを対象にした運動教室を開いている。吉水さんは元高校球児で、高校の硬式野球部で監督をしていた。自身の経験を踏まえて「幼少期の段階からけがをしにくい体づくりや動き方を伝えたい」と、活動の輪を広げている。

 教室は昨年10月、西岩代八幡神社の近くにあるグラウンドで始めた。幼い子がいる知人から「ちょっと子どもを指導してほしい」と言われたのがきっかけだった。コロナ禍もあって、子どもが外で遊ぶ機会が減っていることを心配していた。「それなら」と、野球を通じた知人や近所の人に声をかけるなどして人を集めた。

 初回は予想を大きく上回る親子25人が訪れた。以降は月1回のペースで開き、2回目以降の参加者は40人ほどに増えた。

 教室では親子で遊びながら体を動かし、ボールやマット、平均台などの道具も使って「立つ」「起きる」「跳ぶ」「持つ」「支える」など計36の基本的な動きを伝えている。

 吉水さんは田辺高校、金沢大学の硬式野球部で主将を務めるなど、大学卒業まで白球を追いかけた。高校の教員になり、田辺、南部、紀央館の3校で硬式野球部の指導者を務めた。

 忘れもしないのが、紀央館の監督だった2017年夏の和歌山大会。エースの好投で勝ち上がったが、智弁和歌山との決勝ではエースが疲労のため5回で降板し、2―3で惜敗した。

 「エースに無理をさせてしまった」と吉水さん。この夏の活躍で翌年以降は新入部員が大幅に増えたが結果が伴わず、主力選手のけがにも悩まされたという。

 21年からは野球部のない南紀高校で勤務し、野球の指導からは離れているが、子どものスポーツ障害の予防が重要だと強く感じるようになった。

 運動教室の指導や運営を手伝っているのは、かつての野球仲間や同級生、高校野球の教え子ら。「保護者の負担が軽減し、週末の預かり場や地域の憩いの場になれば」と、知人の飲食店に頼んでキッチンカーを出店してもらい、地域の住民らも飲食物などを買いに来るようになった。「コロナ禍の影響を受けた飲食店の一助になれば」との思いもあったという。

 先ごろ、みなべ町西本庄の西本庄スポーツ広場で、地域の「梅の里スポーツクラブ」と協力して運動教室を開き、約40人が参加した。吉水さんの知人も協力してヨガ教室やコーヒーの振る舞いもあり、参加者は楽しく体を動かした。

 自身も3児の父の吉水さんは「それぞれの得意分野を生かして、指導や販売が広がっていけば。この場が親世代も子どもたちもスポーツに親しむきっかけになってほしい」と話している。

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