南国の楽園、一転火の海に 山火事で「何もかも失われた」

燃えた木々や車が残る米ハワイ・マウイ島。ハワイ州知事公室が10日公表した(同室提供・共同)

 【ホノルル共同】家屋や木々に襲いかかるオレンジの炎。空を覆う煙は不気味に明るく照らされ、火の粉が地吹雪のように激しく吹き上がる。「何もかも失われた」。米ハワイ・マウイ島の山火事は10日、死者が50人を超えた。強風にあおられ一気に燃え広がった火災の猛威は、緑豊かな南国の楽園を瞬く間に焼き尽くした。

 「子ども3人を連れて命からがら車で逃げ出した。ラハイナの街を振り返ると、一面が火の海で真っ赤になっていた」

 甚大な被害に見舞われた島西部ラハイナの東方十数キロに暮らす住職の村上信海さん(67)は、ラハイナに住む友人から惨状を聞かされた。

 強風で家の屋根が吹き飛び、庭に落下。火の回りは早く、最低限の荷物を手に急いで車で避難した。煙が充満して視界が開けない中、勢いを増す炎が背後から追いかけてくるようだったという。幹線道路は猛スピードで逃げ惑う車であふれた。

 「ラハイナは壊滅状態だと思う」と村上さん。知り合いの警察官は焼け野原を目撃し「もう元に戻ることはないと思えるほどだった」と村上さんに語った。

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