消えた街灯と夏祭り 三次市の商店街の取り組み

高齢化と人口の減少は、様々な局面にその影を落としています。ある理由で街灯を消さざるをえなくなった県北の商店街の取り組みとは

夏祭りの賑やかな太鼓の音や掛け声がこだまするのは、三次市の中心部にある中央通り商店街。コロナ禍で3年間中止していた「三次きんさい祭」が、4年ぶりに復活しました。

この夏祭りに合わせて、商店街の街灯が5か月振りに点灯していました。

4万9000人余りが暮らす三次市。この10年間で、1割以上の約7000人が減少。さらに65歳以上の人が4割近くを占めるなど、人口の減少と高齢化は深刻です。

祭りがあった三次中央通り商店街は、街の中心にあり、市役所やJR三次駅に近いこともあり、車は頻繁に行き来します。しかし、日中でも人影はまばら。30年前に70軒あった商店は今は20軒になりました。そしてこの商店街から明かりが消えたのは、今年2月でした。

■道原愛二郎さん

「組合員の協力金で電気をつけてつないできたが、電気代も上がるし堪えきれなくなって」

商店街の理事を務める、道原愛二郎さんです。勤務していた広島市内のお茶の販売会社を退職して、三次市に移住してから、30年が経ちます。

■妻・由紀子さん

「初めての県北だった。縁があって。(初めて三次に来たときは)賑やかだったよね。だんだん組合員も少なくなったしあっという間に寂しくなった」

今年2月までの商店街の明るさは一転。通りは闇に包まれていました。通り沿いにある居酒屋の店主は。

■店主

「街灯がないと寂しい。お店の電気も消えると真っ暗になるので、足下も見えにくい」

三次きんさい祭が近づいてきた7月中旬。道原さんは街灯を灯す方法を考えていました。

組合員が話し合った結果、街灯を再び点灯することにしました。そして、4年ぶりに開く祭りのためにも一役買いたい。費用は祭りの実行委員会と組合が分担することになりました。。点灯の期間は1年です。

一方、組合は、三次市にも相談を持ちかけていました。

■三次市担当者

「どういった形で(街灯の)維持管理をしていくか。しくみづくりを十日市自治連と三次商工会議所と市で一緒に考えていきたい」

そして、3回の中止を経て復活した三次きんさい祭。再び灯った街灯が祭りの列を照らし出します。

■道原愛二郎さん

「町の中心部は灯を消してはいけないとつくづく思った。心まで暗くなるような気がするので。なんとかこれから先この明かりを維持できるように話し合っていきたい」

1年間限定で再び点灯した三次中央通り商店街の街灯。1年後もこの明かりを灯し続けるにはどうすればよいのか。試行錯誤が続きます。

【2023年8月11日放送】

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