<金口木舌>自切の末に

 「自切(じせつ)」。敵に襲われたり、身の危険を感じたりしたトカゲが尻尾を切り離し、命を守ろうとする行為だ。組織の上部が不祥事の責任を免れる「トカゲの尻尾切り」はそこから転じた

▼秋本真利衆院議員が洋上風力発電を手がける日本風力開発側から数千万円の資金を受領した疑惑で、東京地検特捜部は4日、収賄容疑で秋本氏の議員会館事務所を家宅捜索した

▼秋本氏は外務政務官を辞任し、自民党に離党届を提出した。「国民の疑念を招くような事態になったことは大変遺憾」。岸田文雄首相の言葉はどこか人ごとだ。内閣の一員だったにもかかわらず

▼トカゲの尻尾は自切しても再生するが、硬い骨にはならず、色や模様などが変わることもある。多大なエネルギーを使うため再生回数も限られているという

▼岸田内閣は「政治とカネ」の問題などで、昨年末にかけて2カ月で4閣僚が辞任、性的少数者への差別発言などでも政務官、首相秘書官が交代した。支持率低下の中、自切を繰り返した岸田内閣。どんな行く末が待ち受けているだろうか。

© 株式会社琉球新報社