古民家や自然に魅せられ…隣接3軒、同時にリノベ中 兵庫・加古川「播磨富士」のふもと

改築中の古民家前で笑顔を見せる工義尚さん(左)と妻の恵子さん=加古川市志方町成井

 各地で空き家の増加が懸念される中、播磨富士とも呼ばれる高御位山のふもとにある自然豊かな兵庫県加古川市志方町成井で、隣接する古民家3軒の修繕・改築作業が同時に進んでいる。いずれも市外から引っ越してきた夫婦や親子らが、雨漏りの修理などの道具を貸し借りしつつ、楽しみながら取り組んでいる。(笠原次郎)

 地元住民によると、成井地区には約90軒の民家がある。空き家は約20年前から増え始めており、現在も3軒には人が住んでいない。

 スポーツ用自転車の輸入販売業を営む岩佐賢一さん(45)は2022年7月、同県明石市内から転居してきた。築100年以上の白壁の民家に一目ぼれしたといい、約500平方メートルの敷地に立つ木造2階建ての母屋と納屋を一人で修繕している。

 高齢になって農業ができなくなった近隣住民から農地を借りてほしいとの申し出が相次ぎ、現在では自宅近くに3千平方メートル以上の畑を借りている。「今後は畑で野菜を作って、親子向けに食の大切さを伝えていければ」と意気込んでいる。

 隣接するかやぶき屋根の家で暮らすのは、同県稲美町から今年6月に引っ越してきた会社員男性(56)と長女(22)だ。転居は、長女の「古民家で暮らしたい」との願いをかなえるためだった。長女は「近くのため池の堤防から見渡す景色が素晴らしい。春に訪れたときは桜が咲き誇っていた」と自然豊かな環境を満喫している。

 父は神戸市内の会社に通いながら、休日や空き時間を、腐った柱や雨漏りなどの修繕作業に時間を割いている。「今のところ、楽しみながらリノベーションできてるかな」と話す。

 このかやぶき屋根の家が次々と修繕されていくのを見て「家を直すのは楽しそう」と隣の古民家を買ったのは、工義尚(たくみよしひさ)さん(70)と妻恵子さん(60)。2人は11年に成井に移り住んだ。

 2人は、地元に溶け込むため、高御位山の山頂(304メートル)にある神社の世話当番もしっかりと務め上げてきた。恵子さんは「村の人はよく声をかけてくれるし、とても親切」と感謝する。購入した木造2階建ての古民家は柱や床など傷んでいる所が多いが、大工や左官などの知人の力も借りながら、一つずつ直している。

 修繕に必要な道具を岩佐さんらから借りることも多いといい、「古い物件を持つ仲間が近くにいるのは心強い」と恵子さん。義尚さんは野菜作りや養蜂を楽しんでおり「時間がいくらあっても足りない」と充実した表情を見せる。恵子さんは「古民家でカフェを開いたり、料理教室をしたりするのが目標です」と目を輝かせていた。

 地元の住民も移住を歓迎している。成井町内会長の長谷川寿人(ひさと)さん(69)は「3軒のみなさんは、外から入ってきて地元の人ともしっかり交流されている。増えてきた空き家が減っていくのでありがたい」と話していた。

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