日本料理「こくら 正菴」8月8日移転オープン【北九州市小倉北区】

小倉北区鍛冶町で創業した「日本料理 正菴」が、小倉駅から徒歩5分ほどの京町に「こくら 正菴」として8月8日に移転オープンしました。

上質で繊細な日本料理を提供し続け23年。大将の村山さんにこれまでの道のりやこれからの思いを聞きました。

出会いの縁、運のおかげで

「出会いのおかげ、運のおかげで今があります」。きっぱりとした口調で、感謝の思いをまずは口にする大将の村山さん。

生まれも育ちも北九州・門司港の栄町とのことで、栄町といえば屈指の料亭が点在する界隈…という印象を持っている筆者は、大将はきっと実家が料理店で2代目…などと勝手に想像していました。が、その予想は『まったく違って』おり、むしろゼロから実力で勝負できる仕事を模索していたと言います。

高校進学を機に中学まで過ごした北九州を離れ、縁あって佐賀県の高校へ。在学中に宮大工になろうと思い、一度は門を叩いたものの「高所恐怖症」で断念…。ところが運よく当時、世を席巻していた料理の対決番組に出会います。その番組にとても衝撃を受けて、日本料理の道を志す決意をしたそうです。

早速、村山さんは高校の卒業を待たずに、関西で修行。そのあと北九州へ戻り「日本料理 正菴」を開店したのはミレニアムと称された2000年のこと。「隠れ家的な店を目指す」ため、路面に面した所ではなく、飲食店ビルの中の1階の、あえて奥まった場所に店を構えたのですが、「今から思えば考えが至りませんでした。今のようにSNSもない時代、広告も打たず、知名度もないところに、お客様が入ることはなく、お客様にお店のことを知っていただくために、大赤字でしたがランチを展開し続けました」と振り返ります。

「ありがたいことに当時、ランチで来店したお客様が、本業の夜の営業時に新たなお客様を連れて来てくださったり、接待や紹介などで人をつないでくださったりしました」としみじみ語る村山さん。

そして2009年には、既存店と同じビル同じ1階に店舗を新たに借りて「志菴~正菴の離れ~」を展開しました。1店舗をまるごと『離れ』として改装し、「料理だけでなく空間の演出にもこだわりたい、楽しませたい」という夢を実現させました。

「日本料理 正菴」から「こくら 正菴」へ

移転に伴い、店名を「こくら 正菴」へと改名。そんな新店舗を案内してもらいました。

エントランスから通路が真っすぐ延びており、奥行きのある店内です。

写真提供/こくら 正菴

エントランスすぐ右手にはVIP室があり、びっくりました。

写真提供/こくら 正菴

こちらはこの部屋専用の玄関があり、靴を脱いで直接、部屋に入れます。クローゼット、トイレ完備の個室のため、店内を行き来することなく過ごせるとのこと。洗練された和のしつらいの美しさに、筆者はしばし見とれてしまいました。もっとも特別なおもてなしにふさわしい「離れ」のような厳粛で格式高い印象を受けました。堀ごたつ式なのも嬉しいですね(VIP室は別途お部屋の料金がかかります)。

中に進んでいくと、通路の足元には趣のある庭園が見えます。歩く人の心を愉しく豊かにしてくれます。

写真提供/こくら 正菴

右手に6人席が2つ。間仕切りを取れば最大16人までは可能とのことです。

写真提供/こくら 正菴

トイレを通り過ぎて突きあたり、右手一段上がって、カウンターが6席あります。広い空間で贅沢なひとときを愉しめますね。

写真提供/こくら 正菴

カウンターの後ろには、テーブル4人席の個室が2つあります。奥にあるのはワインセラーです。

写真提供/こくら 正菴

各室の空間やしつらいが素晴らしく、感動する一方で、厨房・キッチン部門も見逃せません。厨房から各室へ直接、料理の提供が出来る仕組みです。スマートな動線で働きやすそうですね。

今回の移転を機に、かねてより夢だったという精米機を導入。「精米したてのご飯が一番美味しい!」とはよく知られていること。そんな新鮮なお米にこだわりたいという大将の精米への思いは、佐賀県の農家から直接取り寄せることで叶いました。なお、佐賀県は高校時代から続いているご縁でのこと。過去と現在をつなげる人の出会いの大切さに気付かされた筆者なのでした。

メニューは完全予約制のコースのみ 「八寸」にも力を注ぎたい

四季折々の食材を厳選した日本料理で人々を魅了してきた正菴。これまでと同じく完全予約制のコースのみの提供で、3種類を用意しているとのこと。「ショートコース」(1万8000円/税・サービス料込)、「おまかせコース」(2万4000円/税・サービス料込)、「リクエスト」(時価)を用意。真心こもった一品一品をコースに組み込めてきたこれまでの思いは変わりません。

また、「より一層お客様に満足していただけるように」との想いから、「八寸(はっすん)」にも力を注ぎたいと大将。正菴の八寸は、特注の組子の大きな器に、旬の野菜のみを使った「野菜八寸」となっているとのことです。

空間や演出も含めて存分に格別なひとときを過ごしてもらいたいという長年の思いが実った今回の移転。駅近でこのような広い物件を探し当てるのも大変だったのではと尋ねると、それも「運が良かったんです」と笑う大将の、感謝の表情が印象的でした。

オープン日は末広がりな『8月8日』。駅から近くなり、ますます存在感を増す日本料理店です。

■住所/北九州市小倉北区京町3-6-23 有真ビル1階
■営業時間/18:00~23:00
■店休日/不定
■問い合わせ・予約/TEL 093-533-7072 ※HPやSNSを設けていませんので予約や問い合わせは(できれば営業時間外に)電話でお願いしますとのこと。
■駐車場/なし

※2023年8月12日現在の情報です

(ライター・しまだじゅんこ)

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