移動図書館の「マリオ」引退 小松で10年、中本さん 児童と本つなぐ

移動図書館で業務に当たるマリオ姿の中本さん=小松市立図書館前

 小松市立図書館の移動図書館「みどり号」に乗り込み、貸し出し業務などを担当してきた中本正英さん(72)=同市今江町3丁目=が9月に引退する。ゲームキャラクター「マリオ」に扮(ふん)した姿が人気を集め、10年間にわたって児童と本をつないできた。高齢を理由に区切りを付けるものの、「子どもたちには絵本からでもいいので、これからも本に親しんでほしい」と話している。

 中本さんは鉄工所や繊維会社などで勤め、定年退職後は市シルバー人材センターの会員となり、2013年8月に移動図書館業務を始めた。運転手と共に3千冊載せられる車両で小学校や公共施設などを巡回し、貸し出しや返却業務に当たってきた。利用促進に向け、本を借りた子どもたちに折り紙作品をプレゼントするなど工夫を凝らしてきた。

 マリオの格好をするきっかけは、7年前に通りすがりの人から不意に「マリオがいる」と声を掛けられたことだった。口ひげをたくわえた顔から連想されたのか、家族にも「やってみたら」と背中を押された。

 家族手作りの赤い帽子をかぶり、赤い服の上からオーバーオールを着ると、子どもから「マリオ」と呼ばれて親しまれ、サインを求められることもあった。

 「小学校の高学年になっても移動図書館を楽しみに来てくれる子どもが増えた気がする」と中本さんは手応えを語る。古希を過ぎた中、移動図書館の業務に携わるシルバー人材センターの会員が見つかったことから、活動10年の節目に引退することにした。

 中本さんは「一冊でも好きになると興味や関心が広がると思う。子どもたちには本を読む習慣を身に付けてほしい」と話した。

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