「嫌だと思う人もいるが…夫婦和合や子孫繁栄など意味もある」天下の奇祭“どんつく祭”が5年ぶりに完全復活へ

「天下の奇祭」と呼ばれる静岡県東伊豆町稲取の伝統行事「どんつく祭」が2023年9月30日、5年4か月ぶりに復活します。男性を象徴する巨大なご神体をみこしに乗せて練り歩き、子孫繁栄などを願う祭典でしたが、集客力の低下を理由に、2018年以降は規模を縮小していました。練り歩きを含めた通常の規模に戻すことについて、どんつく祭実行委員長の瀧大輔さん(41=稲取東海ホテル代表取締役)に聞きました。

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―5年4か月ぶりの通常開催を決めた経緯を教えてください

瀧:「どんつく祭」がなくなった後、地域の盛り上がりや昔から定着していた文化を継承していくべきではないかという、地域の方々の意見が多くありました。今年は、どんつく祭を復活させたくなりました。また、「どんつく祭」は、海外にもアピールできるイベント。海外からのお客様を増やしたいという狙いもあります。

―復活に向けて話し合いが始まったのは、いつですか

瀧:今年4月に実行委員会を発足しました。新型コロナウイルス感染症の位置付けが、5月に「5類」に引き下げられることが分かり、話し合いのきっかけになりました。

―2017年までは2日間の開催でしたが、2018年は1日だけ。その後は練り歩きがなくなり、2019年は花火大会、2020年は例祭と、規模を小さくする流れでした。今年は、練り歩きを含む通常の祭りに戻ると考えていいですか

瀧:インバウンド(訪日外国人旅行)の地方誘客や消費拡大に向けた観光コンテンツの造成支援ということで、観光庁の補助金をもらえることになりまして、それを祭り復活に使います。祭りの総事業費が約711万円で、補助の見込み額が約555万円。コロナ禍より前の盛り上がりにしたいと思います。

―以前の祭りは、どれくらいの費用がかかっていましたか

瀧:だいたい400万円くらいで、稲取温泉の旅館組合と観光協会が主に出していました。今年は5年ぶりですから、いままで使っていて、壊れた備品の修理代や海外に向けてのPRの費用が、多くかかると見込んでいます。

―規模縮小後の2020年まで(2021、2022年は開催なし)6月の開催が通例でした。今回はなぜ9月に行うのでしょうか

瀧:観光庁の補助金事業の発表が2月ぐらいだったので、6月開催だと、申請の準備が間に合わない。時期を遅らせて、9月にしました。9月下旬から10月上旬は地元のイベントや学校の運動会が多いので、間をぬって、9月30日にしました。

―今回の開催時間は、午後4時から9時です。どんな内容になりそうですか

瀧:稲取のB級グルメなどが並ぶ屋台が午後4時から開きます。午後7時から神事やご神体の練り歩き、伝統の踊りや太鼓などのステージイベント。最後の20分ぐらいで、花火が上がります。みこしの練り歩きは以前と同様に、温泉街を通りますので、ぜひ、観光客のみなさんも担いでいただきたいです。

―“リアルなご神体”が時代にそぐわないという指摘があると聞きます。そのような批判については、どのようにお考えですか

瀧:ご神体がああいう形ですので、嫌だと思う人もいると思います。しかし、夫婦和合や子孫繁栄などの御利益があって意味もあるイベントですので、ご理解いただいた方々に来ていただいています。イベントとしては、おごそかにやっていきたいと考えています。

◆どんつく祭 約2000年前の弥生時代中期から伝わるとされる。1966年に観光客向けのイベントとして始まり、2日間開催から1日だけに減った2018年が第53回で、今年は第54回。夫婦和合、子孫繁栄、無病息災を神に祈願する。ご神体の男性のシンボルを「ドン!とつく」ことから、名称がついた。ご神体は稲取の「どんつく神社」で展示されている。

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