デビュー戦の小林可夢偉にNASCARの洗礼。後方からの追突受け2度のスピンも、粘りの33位完走

 8月13日、アメリカ・インディアナ州にあるインディアナポリス・モータースピードウェイ(IMS)のロードコースで、NASCARの第24戦『ベライゾン200・アット・ザ・ブリックヤード』が行われ、23XIレーシングからシリーズ初参戦を果たした小林可夢偉は、28番手からスタートし、トップから2周遅れの33位でチェッカーを受けた。

 この週末、NTTインディカー・シリーズとの共催となったNASCAR第24戦。今大会には小林可夢偉の他にも、第18戦での衝撃のデビューウィンも記憶に新しい“SVG”ことシェーン-ヴァン・ギズバーゲンや、今季3度目の参戦となる元F1チャンピオンのジェンソン・バトン、可夢偉同様ル・マン覇者であるマイク・ロッケンフェラーがエントリーするなど、多くのビッグネームが集まったことで話題の一戦となっていた。

 12日、プラクティスセッションで待望のNASCARデビューを果たした可夢偉は、首位から1.244秒差の90秒371で31番手タイムを記録。その後の予選では、トップタイムのダニエル・スアレス(トラックハウス・レーシング/シボレー)から1.109秒差となる89秒077をマークし、翌日の決勝レースを28番グリッドからスタートすることとなる。

■2周目に背後から接触を受け痛恨のスピン

 晴天に恵まれた決勝レースのスタート。可夢偉のドライブする67号車トヨタ・カムリは、クリーンな幕開けを慎重に潜り抜け、1ポジションアップの27番手で1周目を終えた。

2023NASCAR第24戦『ベライゾン200・アット・ザ・ブリックヤード』 決勝レーススタート

 しかし、2周目のターン2の立ち上がりで背後のアンディ・ラリー(リック・ウェア・レーシング/フォード・マスタング)に接触されてしまい、姿勢を乱してハーフスピン。一気に37番手にまで順位を落としてしまう。

 さらに、同じく2周目のターン6でジョーイ・ロガーノ(チーム・ペンスキー/フォード・マスタング)とジャスティン・ハーレイ(カウリグ・レーシング/シボレー・カマロ)が接触し、ハーレイがタイヤバリアに大きくクラッシュ。このクラッシュによりレースは1度目のコーション導入となった。

 このタイミングで可夢偉は、1度ピットへ戻ってマシンのチェックを行っている。

 レースは6周目に再開となり、可夢偉は隊列の最後尾である37番手から挽回を狙う。7周目には33番手、8周目には32番手と着々と順位を上げていく。

2023NASCAR第24戦『ベライゾン200・アット・ザ・ブリックヤード』 小林可夢偉(23XIレーシング/トヨタ・カムリ)

 9周目のターン1では、前を行くブロディ・コステッキ(リチャード・チルドレス・レーシング/シボレー・カマロ)とリッキー・ステンハウスJr.(JTGドアティ・レーシング/シボレー・カマロ)のインに飛び込み、まとめてオーバーテイクしようと試みるが、惜しくもブレーキングミスを冒してオーバーランを喫するシーンも見られた。

 その後は可夢偉は、慣れないマシンと格闘しながらもポジションをキープし、31番手で15周のステージ1が終了。

 周囲のドライバーらがこのタイミングでのピットインを選択していくなか、ステイアウトを選んだ可夢偉は、周回ごとにポジションを回復していく。

2023NASCAR第24戦『ベライゾン200・アット・ザ・ブリックヤード』 小林可夢偉(23XIレーシング/トヨタ・カムリ)

■接触の借りを返す追い上げ披露も2度目のスピン

 23周目には8番手にまでポジションを上げた可夢偉は、ここで2度目のピットインへと向かい14番手でコースに復帰した。

 しかし、アウトラップのマシンコントロールに苦戦したのか、26周目にはステージ1終了時と同じ31番手にまで順位を下げてしまう。

 その後可夢偉は、しばらくは同じ順位をキープしながら温存走行を続け、28番手となったタイミングでレースは35周目を迎えステージ2を終了。残り周回数は47周となる。

2023NASCAR第24戦『ベライゾン200・アット・ザ・ブリックヤード』 小林可夢偉(23XIレーシング/トヨタ・カムリ)

 39周目には、前を走るアンディ・ラリーのペースダウンの隙を突いてオーバーテイクし、25番手にポジションアップ。2周目に受けた接触を走りで返上する追い上げを見せる。

 引き続き順調に周回を重ねる可夢偉は、トップ集団のピットインによるポジションアップで8番手となり、53周目に最後のルーティンピットへと向かった。

ピットでルーティンワークを受ける小林可夢偉(23XIレーシング/トヨタ・カムリ)

 19番手でコースへと戻るも、ペースを取り戻すころには32番手となり、後方で我慢の走りを強いられる展開に。

 可夢偉のすぐ後方には、リッキー・ステンハウスJr.(JTGドアティ・レーシング/シボレー・カマロ)が徐々に接近を開始し、バトルになるかと思われた65周目のターン1で、ステンハウスJr.が可夢偉に追突。可夢偉はこの日2度目のスピンを喫してしまった。

 なんとかポジションを保ったままコースに復帰した可夢偉だが、マシンバランスが乱れたかペースダウンを起こしてしまい、72周目にたまらずピットへ。

 チームはマシンを確認したのち、タイヤ交換と給油を行ってコースへ送り戻すも、ポジションは35番手にダウン。

 以降可夢偉は、ひとつでも順位を上げるべく走行を続け、最終的には2ポジションアップの33位でチェッカーフラッグを受けた。

2023NASCAR第24戦『ベライゾン200・アット・ザ・ブリックヤード』 小林可夢偉(23XIレーシング/トヨタ・カムリ)

 優勝を飾ったのは、4番手スタートから見事首位の座を奪ったマイケル・マクドウェル(フロント・ロウ・モータースポーツ/フォード・マスタング)。

 ポールスタートのダニエル・スアレス(トラックハウス・レーシング/シボレー・カマロ)を7周目にオーバーテイクし、以降は他を寄せ付けないペースで周回を重ねてトップの座を守りぬいた。

 2位は3番手スタートのチェイス・エリオット(ヘンドリック・モータースポーツ/シボレー・カマロ)、3位にはスアレスが入る表彰台のオーダーとなった。

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