「新 事業承継・相続の教科書」|編集部おすすめの1冊

数あるビジネス書や経済小説の中から、M&A Onlineがおすすめの1冊をピックアップ。M&Aに関するものはもちろん、日々の仕事術や経済ニュースを読み解く知識として役立つ本を紹介する。

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新 事業承継・相続の教科書~オーナー経営者が節税よりも大切にしたいこと 石渡英敬 著、翔泳社刊

事業承継や相続の本質は、会社を継がせる人(オーナー社長)、継ぐ人(後継者)、継がない人 (非後継者)の間の「価値観のギャップをどのように埋めていくのか」にある。「事業承継対策=税金対策」と思っていたら思わぬ落とし穴にはまることがある。

本書はこんな思いを込め書かれた。著者は保険会社のライフプランナー。祖父が興したスーパーマーケットを巡って父親や叔父ら親族間で生じたもめごとを目の当たりにした経験を活かして、オーナー経営者の事業承継対策や相続対策に特化した活動を展開。自らを「オーナーファミリーの伴走者」と位置付ける。

事業承継で兄弟や親族がもめることが多々ある中、「親族承継こそ、日本らしさ、日本の強み」とし、「後継者がいることをアドバンテージとして最大限活かしてほしい」とオーナー経営者にエールを送る。

本書の主要部分を構成するのは13の事例。自身の実家のスーパーマーケットをはじめ、お家騒動の末に大手企業の傘下に入った定食店の大戸屋、さらには地方の中小企業(フィクション仕立て)で実際にあったもめごとなどを紹介している。

20年前に父親から株式を贈与され、中小メーカーの経営を引き継いだ長男が、父親が亡くなり財産相続の際に、妹から自身も当該の株式を相続する権利があると主張され困り果てたケース。

株式が一族の40人にまで分散してしまい、分散した株式を買い集めようとしたものの売却に応じない親族から、経営する会社が厳しい状況にあるにもかかわらず配当を求められたケースなど、よく起こりそうな事例を集めてある。

そのうえで、難しい親族承継をどのようにすれば、うまく実現できるのか、もめごとへの対策と解決策のヒントを「親族承継に光を!」のテーマでまとめた。

第三者に経営権を譲るM&Aによって、もめごとを解決することも可能だが、親族承継を軸に経営を譲りたいと考えている経営者にとっては、大いに参考になりそうだ。(2023年4月発売)

文:M&A Online

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