チームWRT、LMGT3参戦に向けGTスタッフの増員を計画。GTWCヨーロッパも継続予定

 チームWRTは、2024年のWEC世界耐久選手権に新設されるLMGT3クラスで実現する可能性の高いプログラムに備え、GT部門のスタッフ増員を計画している。

 ベルギーのチームは来季、BMWのLMDhカー『BMW MハイブリッドV8』を使用した2台体制でのWECハイパーカー活動を行うが、これに加えてLMGT3クラスにも『BMW M4 GT3』のペアエントリーが見込まれている。

 また、WRTは2024年も引き続きファナテック・GTワールドチャレンジ・ヨーロッパ(GTWCヨーロッパ)・パワード・バイ・AWSに参戦する意向であり、現在のGTスタッフは少なくとも18のレースイベントを受け持つことになる。

 GT部門の経営陣のひとりは、予想されるデュアルシリーズに備えるため、さらに何人かを雇う計画が動いていると説明した。

 WRTの共同スポーティングディレクターであるカート・モレケンスはSportscar365に対し、「それぞれのクルマを担当するメカニックは必ず別にしておく必要がある」と語った。

「エンジニアを混ぜることはできるか? 可能だ。だが、もしそうするなら、彼らにとってはチャレンジになるだろうね。各選手権のふたつのポジションを3人で担当することになる」

「つまり、僕とエリオット(・オッフェ)とマックス(・ボヌフォア)の3人で、ふたつのチャンピオンシップを運営することになるんだ。その点では今の体制で問題ない」

「(GTプログラムの)エンジニアに関しては充分な人数がいるが、ダブルプログラムをやりたいかどうかは彼らが決めることだ。我々が彼らに強要することはない。なぜならそれは非常に忙しいからだ」

「メカニックは確実に1号車と2号車を担当するそれぞれのメンバーが必要だ。兼任はできない。ナンバー3とナンバー4を混ぜることはできるが、同じ量の仕事をこなすことはできないだろう。だから、スタッフを増やす必要があるのは確かだ」

 WRTはGTとプロトタイプで別々のチームを運営している。後者は現在WECのLMP2プログラムを運営中であり、まもなくBMWハイパーカーのファクトリープログラム部隊となる予定だ。

 モレケンスは、GTチームにメカニックを6人ほど追加する必要があると見積もり、追加のエンジニアは個々の計画に依存することになると述べた。

「エンジニアが何をしたいかによる。しかし、我々は良いグループを持っている。エンジニアを新たに雇う必要があるとしても、メカニックが必要なのと同じ程度ではなく最大でもひとりか、ふたりだろう」

 WRTは今年から来年にかけてスタッフの増員計画を立て始めたが、LMGT3エントリーを運営するためにBMWからどれだけの支援を得られるかは未知数だ。

 この点についてモレケンスは、LMGT3が通常チームに資金をもたらすブロンズとシルバーランクのドライバーを含むプロアマ・クラスであることを考慮すれば、ミュンヘンからの財政的なサポートがなくてもチームはプログラムを運営することができると示唆した。

「WECが非常に高価なチャンピオンシップであることはたしかだ。なぜなら、8ラウンドを戦い、そのうちの5ラウンドがフライアウェイだからね」と同氏。

「しかし、その選手権のために我々と接触してきたブロンズやシルバーのドライバーはたくさんいる。だから、BMWのサポートは必要ないかもしれない」

「だが、少なくともメーカーは参加することにある程度興味を持っている。(ハイパーカーとLMGT3の)4台のマシンが同じカラーで揃うのはいいことだ」

「LMDhが隣にあることで、すでに相乗効果が生まれている。ふたつのホスピタリティ・ユニットを持つつもりはないため、それは私たち双方にコスト効果をもたらすことになる」

バレンティーノ・ロッシがドライブする46号車BMW M4 GT3(チームWRT)

■LMGT3では“BMW Mチーム”を名乗らない

 BMW Mモータースポーツ・ディレクターのアンドレアス・ルースは、Sportscar365の取材に対し、ドイツのメーカーを代表するLMGT3チームにどの程度の支援を行うか、現時点では決めていないと語った。

 さらに、LMGT3へのエントリーではクルマを購入したカスタマーチームによって運営される体系となるため、“BMW Mチーム”のバナーは使用されないという。

「チームには、スポンサーや潜在的なパートナーから、そこに関わりたいという多くのチャンスが訪れる」とルースは述べた。

「このプログラムは、我々の支援に少し依存している。ファクトリードライバーが参加すれば、それはファクトリーサポートとなるんだ」

「では、どれだけの規模で関与しなければならないかを見なければならないが、私たちがそれを定義するには現状、あまりにも遠すぎるんだ」

■GTWCヨーロッパへの参戦台数は未定

 WRTは現在、GTWCヨーロッパのエンデュランスカップとスプリントカップで計4台のBMW M4 GT3を走らせているが、LMGT3プログラムが追加されることによってこれらの数字にどのような影響を与えるかは不透明だ。

「今のところ、GTワールド・チャレンジとWECの間に衝突はない。それは両選手権の間で合意されていると思う」と語るのは、WRTのヴァンサン・ボッセ代表。

「言うまでもなく、我々はそれらに取り組んでいる。それは政治的に正しいことだ」

「目標はGTワールドチャレンジにとどまることだ。FIA GT3選手権だった2010年以来、我々はSROチャンピオンシップにコミットしている」

「状況によって異なるが、全部で5台のクルマを走らせる年もあれば3、4台で走る年もあった。いまは4台でチャンピオンシップを戦っている」

「来年は3台体制になるかもしれないし、4台のままかもしれない。わからない。まだ決まっていないんだ」

ヴァンサン・ボッセ(左)とアンドレアス・ルース(右)

© 株式会社三栄