戦争繰り返さないよう願う 戦死した父の写真を手に平和への思い強く、和歌山

父・白川八郎さんの写真を持つ藤井珠代さん(和歌山県上富田町岩田で)

 太平洋戦争で父親を亡くした和歌山県上富田町岩田の藤井珠代さん(82)は、終戦記念日を前に当時の写真などを取り出し、父親のことや母親の苦労を思い出している。「多くの犠牲と、たくさんの人が辛抱してきた上で、今の平和がある。戦争を繰り返さないためにも、昔のことを知ってもらいたい」と力を込める。

 藤井さんは昭和15(1940)年に当時の田辺町(現田辺市)で生まれた。幼少期だったため戦時中の記憶はおぼろげだが、父親の白川八郎さん(享年31歳)が戦死したと知り泣き崩れる母親の姿や、多くの親族で葬式をしたことは覚えているという。

 白川さんは28歳の時に軍隊に入った。藤井さんが2歳の頃だった。入隊後は東南アジアのボルネオ島(カリマンタン島)に配備されたが、太平洋戦争末期の1945年6月、ボルネオ島での連合軍との戦いにより、戦死した。

 白川さんは戦地に行く前、当時では珍しかった海外の乗用車を購入し、友人と運送会社を経営していた。道すがら、歩いている人を目的地まで乗せてあげることもあったといい、藤井さんは「お人よしで、困っている人を見過ごせない性格だったんだと思う」と話す。

 藤井さんは終戦後、中学生になるまで母親と離れて暮らすことになり、母親や父親の実家を転々とした。「つらくて大変な時期もあったけど、私より母の苦労は大きかったと思うし、もっと大変な思いをした人もいたと思う」と振り返る。

 最近は、ロシアのウクライナ侵攻に胸を痛めている。「戦争は絶対にいけないこと。戦争で親を亡くすことは、絶対にあってはならない。平和ほど、ありがたいことはない」と話している。

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