柄本佑、小津安二郎の傑作「生れてはみたけれど」リメーク版で主演。「小津作品は見るものだと思っていました」

WOWOWでは11月から、小津安二郎生誕120年記念作として「連続ドラマW OZU~小津安二郎が描いた物語~」(日曜午後10:00、開始日未定)を全6話で放送・配信。第2話「生れてはみたけれど」の主演に、WOWOWドラマ初主演となる柄本佑が決定した。

「小津調」と称される独特かつ唯一無二の映像世界で、没後60年となる今もなお国内外を問わず高い評価を受け続ける映画監督・小津安二郎。生誕から120年を迎えた今年、若かりし頃に小津監督が手掛けた初期のサイレント映画群を、「連続ドラマW OZU~小津安二郎が描いた物語~」では、オムニバスドラマ形式でリメークする。

第1話は、90年前に公開され、1933年のキネマ旬報ベスト・テン第1位を獲得した「出来ごころ」を、田中圭主演でリメーク。そして、第2話として、32年に公開され、その年のキネマ旬報ベスト・テン第1位を獲得した「大人の見る繪本 生れてはみたけれど」を、主演・柄本、国仲涼子、染谷将太らの共演で紡ぐ。小津監督のサイレント期の代表作で、子どもの純真な目線を通して、大人の悲哀を描く物語だ。

柄本が演じるのは、息子たちの前では威厳のある父親だが、会社では出世のため専務の岩崎に取り入ろうとヘコヘコする会社員の健介。夫・健介のよき理解者であり、子どもたちには優しい⺟・英子を国仲が、健介が勤める会社の専務・岩崎を染谷が務める。豪華な家屋で気ままに暮らすお金持ちの岩崎は、親が経営する会社の役員に就き、部下の健介に目をかけている。そのほかにも、健介の⻑男・良一役に小山蒼海、その弟・啓二役を白鳥廉、岩崎の妻・美恵役は土村芳、ホームレス役として渋川清彦が決定した。

会社員の健介は、田園の広がる郊外に家族で引っ越しをする。近所に住む専務・岩崎に出世のため取り入ろうとする健介だったが、息子の良一と啓二は、家では威厳のある父が上司・岩崎の前でこびる姿を知って反発する。「お父さんは偉くなれないの?」――子どもの問いに向き合う父役に、柄本が体当たりで挑む。

初めて小津監督作品に携わった柄本は、「小津作品は見るものだと思っていました。まさかリメークという形で関わることができる人生だったとは…」と感激。普遍性に満ちた作品は難しかったようだが、「タフネスな吉田(康弘)監督の演出がとても楽しく、楽しくやることができました」と心から楽しんだ様子。しかし、「楽しかっただけに一言文句を言わせてもらいます。(撮影期間が)1週間は短いってぇ…(笑)」と述べて、悔しさもにじませた。そして、「現代によみがえった『生れてはみたけれど』。このタイトルの後にどんな言葉が紡がれるのか? 見終わった後の皆さまの頭の中が楽しみです!」と期待を寄せた。

今回、脚本・監督を担当する吉田氏は、映画「かぞくいろ RAILWAYS わたしたちの出発」(2018年)や、ドラマ「二十四の瞳」(NHK)などを手掛けた実力派だ。

「世界に愛された小津監督の傑作のリメークです。気合いが入らない訳がありません」と目を輝かせる吉田氏。原作の映画については「90年前の作品はサイレントにもかかわらず、息遣いまで聞こえてきそうな俳優陣(特に子役)の魅力的なお芝居が満載」と語り、「これに負けない表情を引き出さねばなりません。テーマは現代にも通じる人間社会のヒエラルキー。決して古びておりません」と強調。「柄本さんをはじめ、(小津監督の)映画『突貫小僧』(29年)に負けない子役たちを集結し、スタッフ共々やる気満々で撮影しました。ご期待ください」と熱いメッセージを伝えている。

© 株式会社東京ニュース通信社