奇跡の一瞬を捉えたレベッカ圧巻のステージ!1985年12月の渋谷公会堂ライブを完全収録  ハイクオリティ映像でよみがえる!「REBECCA LIVE '85 -MAYBE TOMORROW Complete Edition-」

佐野元春、レベッカ、TM NETWORKらトップアーティストたちが80〜90年代に残したライヴ映像

東京・立川の映画館、シネマシティで8月14日(月)より第1弾上映がスタートした『シネマシティ ライヴ・フィルム・フェスティヴァル 2023』。佐野元春、レベッカ、TM NETWORKらトップアーティストたちが80〜90年代に残したライヴ映像を、最新デジタル・マスタリング・サウンド&アップコンバートを施し、ハイクオリティな映像で上映される。

いずれも30年以上前の記録でありながら、まるでその日その時、同じ会場にいるかのような臨場感を伴って観る者に迫ってくる。

今回のラインナップのうち、8月15日に上映されるレベッカの1985年のライヴ『REBECCA LIVE’85-MAYBE TOMORROW Complete Editon-』は、時代の記録としても貴重な映像と言えるだろう。同年11月1日にリリースされたアルバム『REBECCA Ⅳ〜Maybe Tomorrow』を携えてのコンサートツアーの、12月25日、渋谷公会堂でのステージを完全収録したライブである。

そして今回上映された映像は、1986年11月1日に早稲田大学で行われたSECRET GIG『REBECCA SPECIAL LOVE LETTER』の全編も加えた2枚組のDVD『REBECCA LIVE ’85-’86 -Maybe Tomorrow & Secret Gig Complete Edition-』として発売されているので、今回劇場に足を運べなかった人はこちらをチェックして欲しい。

初のフルアルバム「REBECCA Ⅳ〜Maybe Tomorrow」でチャート1位を獲得

1985年はレベッカのキャリアの中でも激動の1年であった。レベッカは1982年に結成、84年4月21日、CBS・ソニーのFITZBEATレーベルから「ウェラム・ボートクラブ」でデビューを果たしたが、初期はセールス面、ライヴの動員面でもかなり苦戦を強いられていた。そして85年の1月、音楽的な方向性の違いから、結成メンバーであるギターの木暮武彦とドラムの小沼達也が脱退し、存続の危機を迎えていたのだ。

だがキーボードの土橋安騎夫を新たなリーダーに、サウンド面を大きく変更し、ロックからNOKKOのヴォーカルの特性を活かしたシンセポップへと方向性を変える。NOKKOは当時大流行していたマドンナのファッションを取り入れ、しなやかに歌い踊るポップアイコンとして急速にティーンエイジャーたちの注目を集めることとなった。ちなみに脱退した木暮はその後RED WARRIORSを結成するのはご存知の通り。

85年4月のシングル3作目「ラブ イズ Cash」のスマッシュヒット、そして同年10月21日にリリースされた「フレンズ」を、チャート最高3位の大ヒットに導く。そして4作目にして初の全10曲収録フルアルバムとなった『REBECCAⅣ〜Maybe Tomorrow』で遂にチャート1位を獲得した。

また、ライヴでも著しい変化が見られた。最初期に行った京都のライブハウスの公演では観客がたった4人で、観客よりメンバーの方が多かった、などという出来事もあったほどだが、85年1月のeggmanの公演では同所の動員記録を作り、4月の渋谷LIVE INN公演は「酸欠ライヴ」と呼ばれるほど超満員に。6月には日本青年館公演、そしてこの12月25日に初の渋谷公会堂ライヴに到達する。

セットリストはほとんどがアップテンポのパワーポップナンバー

解散の危機から一躍大ブレイク。上昇気流に乗ったバンドの勢いがそのままこの日のライヴに投影されているのだ。オープニング「光と影の誘惑」のインストが流れると、既に満員の会場は沸騰寸前。そして、ゼブラ柄の上下に白いジャケットを羽織り、髪にリボン姿のNOKKOが登場するや否や、早くも観客の興奮はピークに達した。1曲目の「HOT SPICE」からパワー全開、ギター、ベースと共に激しく身体を揺らし、スタンドマイクからハンドマイクに持ち替え、「76th STAR」を激しく歌い踊る。

随所に挟み込まれたMCでも「いやー、(お客さんが)いっぱいいるなあ」「デビューして1年半、こんなにお客さんはいなかった」などとNOKKOは偽らざる心境を吐露、アルバム前作『WILD &HONEY』からライヴのお客さんが増えたことを率直に語っていた。

セットリストはほとんどがアップテンポのパワーポップナンバーばかりな点も、バンドの勢いを感じさせるが、ことに中盤、このタイミングでチャートを駆け上がっていた「フレンズ」のドライブ感溢れる熱唱と、それに続くバラード「Maybe Tomorrow」が披露されるシーンは、このステージのハイライトと呼んでいい。土橋安騎夫の生み出すメロディーは、中音域から高音域へ、上昇旋律に乗せてグイグイとギアを上げていくNOKKOのヴォーカルの特性を顕著に反映したものなのだ。

また、ドラムス小田原豊とベース高橋教之による強靭なリズムセクションと、その上に乗るエモーショナルな古賀森男のギター、土橋のカラフルなキーボードの音色のによって、レベッカ独自のサウンドが生み出されていることも、このライヴ演奏を聴けば一目瞭然。4人の高度でパワフルなアンサンブルこそが、NOKKOの力強いヴォーカルを支えているのである。

NOKKOはキュートなヘソ出しルックで観客を挑発

後半のNOKKOはガーリーな深紅の衣装に身を包み、キュートなヘソ出しルックで観客を挑発。12月25日の公演とあって、本編ラストの「LOVE IS CASH」では、NOKKOの「メリー・クリスマス!」の掛け声と共に、サンタまで登場して華やかにクリスマスの夜を盛り上げた。そしてアンコールで再び歌われた「フレンズ」では、観客の大合唱に答えるかのように、噛み締めるように歌い、時に感極まって涙ぐむNOKKOの姿があった。

この「フレンズ」はまさに名唱名演、レベッカ人気が本物であることをメンバーと観客が互いに確認し合うかのような熱いパフォーマンスとなった。

ライブハウスから日本青年館、渋谷公会堂という形でキャパシティを広げていき、その先に日本武道館公演、そしてスタジアムライヴと更なる動員力を拡張させていくコースは、80年代のロックバンドのサクセスストーリーの典型で、その最初の成功例がレベッカだったのだ。その成功が確かなものであったことが38年を経た現在でもヴィヴィッドに伝わってくる、奇跡の一瞬を捉えた圧巻のステージだ。

カタリベ: 馬飼野元宏

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