誠実に生きるということ。津村記久子の心に深くしみる小説『水車小屋のネネ』

朝読書におすすめの本をご紹介する『まっこリ~ナのCafe BonBon』。小説やエッセイ、暮らしや料理の本など心に効く本をセレクトしています。

今日の「まっこリ~ナのカフェボンボン」の本棚は、『水車小屋のネネ』

『ミュージック・ブレス・ユー!!』『ポトスライムの舟』『この世にたやすい仕事はない』などの作品で知られる芥川賞作家・津村記久子の最新作です。理佐と律という名前の姉妹を主人公に40年にわたる物語を描きます。

水車小屋のネネ
著者:津村記久子
出版社:毎日新聞出版

1981年、理佐18歳、律が8歳の時、姉妹は家を出て、山深いのどかな町でふたりだけの暮らしを始めることになる。物語の舞台となるのは水車小屋のあるおそば屋さん。そこで姉妹は「ネネ」という不思議な鳥と出会います。

そば屋を営む夫婦をはじめ、町の人たちがどのように姉妹を見守り関わっていくのか。みながお互いを気づかい思いやる。心配し心配されること、それが当たり前のことなのだと感じます。姉妹の生活に最初に飛び込んでくるのはネネ。ふたりだけの小さな世界は年月をかけてゆっくりと、外に向かって開いていきます。

鳥のネネに驚嘆します。どれだけネネがすごいかは読み進んでのお楽しみ。背景にさまざまな映画や音楽が登場するのも物語の魅力的なところです。私の大好きな映画も出てきてグッときました。姉妹が休日を過ごすシーンもとても好き。ある日、理佐は律を連れて「地元の駅からいちばん近い急行が停まる駅」に出かけていきます。ふたりは映画を観たあと、書店に寄ったり、喫茶店でクリームソーダを飲んだりする。日常がきらきら輝く場面を何度も読み返したくなります。

幅広い世代の人が楽しめる小説です。物語のパワーを感じる一冊をぜひどうぞ。

ラブ&ピースな一日を。
Love, まっこリ〜ナ

「まっこリ~ナのカフェボンボン」を読んでくださってありがとうございます。「カフェボンボン」が心ときめく本との出会いの場となりますように。

*朝読書のすすめ『まっこリ~ナのCafe BonBon』連載一覧はこちらです。
https://asajikan.jp/topics/cafebonbon/

© アイランド株式会社