宮崎市出身作家・中村地平の手紙2通見つかる 「子供の像」原体験つづる

宮崎市出身の作家中村地平が、終戦直前に疎開先の家族に宛てた手紙

 宮崎市出身の作家、中村地平(1908~63年)が終戦直前に、疎開中の家族に宛てた手紙2通が見つかった。終戦後、最初に手がけた小説「子供の像」(48年)のモチーフとなった戦時中の体験が具体的に記されており、識者は「疎開先で危篤状態に陥った娘が回復したことにより、中村が戦後を生きていく原動力を得たことが生々しく伝わってくる」などと注目している。
 「子供の像」は、妻の実家に疎開していた娘の弓子さんが感染症で危篤となり、奇跡的に持ち直した実体験を基に描いている。子どもの生命力に、敗戦から復興していく希望を託した内容で、作風も、浪漫主義が漂う「南方文学」から私小説へと変わった転機の作品と位置づけられている。

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