阿部未悠の練習日は大忙し 最近の「ToDoリスト」とは

棒やゴムひもを使って…。阿部未悠の「ToDoリスト」は盛りだくさん(撮影/服部謙二郎)

◇国内女子◇NEC軽井沢72ゴルフトーナメント ◇軽井沢72G北コース(長野)◇6702yd(パー72)

阿部未悠の練習日は忙しい。練習ラウンドでコースをチェックするのはもちろんだが、それ以外にもショット、パッティング、アプローチで取り組むべき課題がいくつもある。そのメニューをこなすだけで、あっという間に一日が過ぎてしまう。

ゴムひもを使って曲がるラインのイメージをつける(撮影/服部謙二郎)

例えば毎日必ず行うのが、ゴムひもを使ったパッティング練習だ。フック、スライスと曲がるラインのカップに対し、打ち出す方向にゴムひもをセットし、線に対して球を打つ。しかし、実は今までこの練習の持つ意味をちゃんと理解していなかった。

「単にラインの切れる頂点に対して出球をそこに出すだけの練習だと思っていたんです。それなら、パッティングのテンプレートを使って出球を出す練習もしているので、それで十分かなと思っていました」

本当の意味は、目澤秀憲コーチのアドバイスで知った。目澤コーチは「もちろん出球がズレているかをチェックはできますが、それに合わせて線があることで“ボールがどこから切れるのか、切れてからどれぐらい転がるのか”をイメージしやすいんです。毎週のようにスピードが変わるグリーンに対して、曲がるライン全体を可視化する練習はすごく大事。新しいコースに行ったらこの練習は必ずやってもらっています」と説明する。

阿部は曲がるラインが苦手だった。「例えばカップ1個右に外すフックラインだとしたら、そこに真っすぐ打つものの、だいたい打ち過ぎてオーバーしていました」と目澤コーチ。そんな阿部には、ラインがイメージできる“ゴムひも練習”はうってつけ。阿部は「切れる場所とカップインのタイミングとが明確になり、特にズレやすい下りでのタッチが合ってきました。日々グリーンのスピードも変わるので、毎朝スタート前にやっています」。フック、スライスに合わせて上り下りも含めて4方向から練習しているという。

棒を両脇に挟んでパッティング。右手が強いと棒が外れる(撮影/服部謙二郎)

「ゴムひも」の次は「棒」を使う。2本の棒をそれぞれ両脇に挟み、体の前でクロスさせて、その棒が外れないように打つ練習。棒は簡易的に脇で挟んでクロスさせているだけなので、悪い動きをすると、すぐに外れる。いかにも打ちづらそうな状態だが、阿部は棒が作る形を崩さず、シャフトを滑らすようにスムーズにストロークしていた。

パッティングテンプレートでの練習。目澤秀憲コーチが後ろで見守る(撮影/服部謙二郎)

「パットが悪くなってくると、ショットでいうハイドローを打つような感じでかちあげるように打ってしまう癖があるんです。それを直すためで、右手の使いすぎを防いでいます」と阿部。その“ハイドロー打ち”になると「右の棒がガチャンと外れてしまって、棒がクラブの上にいってしまう」と身振り手振りで解説してくれた。阿部はその後もパッティングテンプレート(ヘッド軌道が描かれたプレート)を使う練習などを行っていた。

ゴムバンドをつけて球を打つ(撮影/服部謙二郎)

阿部が次に向かったのは打撃練習場。今度はバッグからトレーニングでよく使うようなゴムバンドを取り出した。それを両ひざ付近に取り付け、球を打つ。「ひざが内旋して中に入っちゃう癖があって、そうなるとスイング中にお尻が使えなくなっちゃうんです。切り返しのところでひざも割れないんで、ミスにつながりやすい」。これも目澤コーチのアドバイスでシーズン開幕前からやってきた様子。バンドでテンションをかけることで、「バックスイングでひざが内側に入ってしまったり、ダウンスイングとかでひざが切り上がらないなどの防止になります」ということだ。

昨季に初シードをとり、今季はトップ10も4回を数え、初優勝まであと一歩のところまで来ている。脇目も振らずやるべきことを、「ToDoリスト」をこなす姿を見ていると、歓喜のときが来る日もそう遠くないだろうと思えてきた。(長野県軽井沢町/服部謙二郎)

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