亡き母の味で弁当店 野々市の森さん 「だしがら」でつくだ煮

かつお節でだしを取る森さん=野々市市本町1丁目

 野々市市本町1丁目の森義治さん(44)が、亡き母が得意としたかつお節の「だしがら」で作ったつくだ煮を使い、弁当の販売を始めた。自宅の敷地にプレハブの店舗を構え「キッチン出汁牡丹(だしぼたん)」として開業。母・清美さんと付き合いがあった近所の人たちは「おかんのつくだ煮をたくさんの人に食べてほしい」と意気込む息子の新たな出発を温かく見守っている。

 7年前、金沢市片町のうどん店で店長を務めていた森さん。日々大量に出るかつお節のだしがらが廃棄されていることを知った清美さんから「もったいない」と持って帰って来るよう頼まれたという。清美さんはだしがらを刻み、しょうゆや砂糖、唐辛子、ゴマなどで味付けし、つくだ煮にすると近所に配っていた。

 3年前に63歳で清美さんが病死した後、森さんは近所の人からつくだ煮が喜ばれていたと聞いた。「おかんの忘れ形見を作ってみたい」と思い、だしを生かした料理づくりを始めた。

 昨年4月からは、食品製造を志す人が経験を積むことができる市にぎわいの里ののいちカミーノ内のシェアキッチンを活用。だしがらのつくだ煮をさまざまな料理に合わせたほか、ドリア、パスタなど和洋問わずだしを入れたメニューの開発を進めた。

 8日、森さんは4畳半のプレハブで母の味を再現する弁当販売のスタートを切った。だし巻きたまごサンド、つくだ煮を具にしたおにぎりなどを並べた。

 自慢のだしは昆布、カツオ、アジなどを混ぜた「混合削り節」で取り、金沢市大野のしょうゆと砂糖で味を調えた。つくだ煮はパック詰めして商品化。おにぎりには野々市産の日本酒「猩々(しょうじょう)」の酒かすで作った塩も利用している。

 森さんの弁当に添えられたつくだ煮が清美さんと同じ味で驚いたという近所の女性(71)は「清美さんは『お口に合うか分からないけど』といつも笑顔だった。ご飯のお供に食べておいしかった」と懐かしむ。

 森さんは「おかんのつくだ煮にはたくさんの可能性がある」とし、今後もレパートリーを増やしていきたいと話している。

プレハブを使った弁当店

© 株式会社北國新聞社