ネット依存と併発しやすい3つの精神疾患とは?並行して治療すると改善しやすいってホント?【図解 依存症の話】

並行して治療すると改善しやすい

ゲーム障害やスマホ依存の患者の診察や検査をしていると、他の精神疾患が見つかることがあります。特に多いのは、発達障害、睡眠障害、社交不安障害の3つです。発達障害の中でもコミュニケーションの苦手なASD(自閉スペクトラム症)は、ネットやゲームの中に居場所を求める傾向が見られます。一方、衝動性のコントロールが苦手なADHD(注意欠陥多動性障害)はやりたいと考えたら我慢できないためついゲームなどに夢中になってしまい、本来すべきことから逃避しがちです。

また、睡眠時間が乱れて眠れないとき、「眠たくなるまで時間をつぶそう」とスマホを眺めていると、ブルーライトやコンテンツが脳を活性化させ、ますます眠れなくなります。この悪循環は、スマホ依存と睡眠障害の両方を悪化させます。また、社交不安障害があると、人と過ごすのが苦痛なため1人の時間を好みます。ネット上ではそれほど緊張せずにコミュニケーションができるので、誰もいないときにスマホを使っていると、思いがけずのめり込むことがあります。これらの精神疾患がネット依存と併発している場合は、並行して治療を行うのが望ましいとされます。どちらかが改善すると、もう一方も改善することがあるからです。ただ、関連性はあるものの、依存症の原因というわけではありません。

ネット依存と関連が深い3つの精神疾患

生きづらさの原因となる障害があると依存を起こしやすくなります。依存によって悪化する障害もあるので、並行して治療することが大切です。

発達障害

ASD(自閉症スペクトラム症)はコミュニケーションが苦手でこだわり行動が見られます。ADHD(注意欠陥多動性障害)は落ち着きがなく注意力の持続や行動が困難です。

睡眠障害

なかなか眠れない睡眠障害は、眠りが浅くて何度も目が覚める中途覚醒、早朝覚醒などにより、日中に倦怠感・集中力や意欲の低下・食欲不振といった不調を起こします。

社交不安障害

注目されたり人前で恥をかいたりすることに強い恐怖を覚え、会話や人が多い場所に出かけるだけでも苦痛を感じます。外出や人と会うことを避けるようになることも。

出典:『短時間でしっかりわかる 図解 依存症の話』大石 雅之

【書誌情報】
『短時間でしっかりわかる 図解 依存症の話』
大石 雅之 著

特定の物質や行動をやめたくてもやめられない病の「依存症」。スマートフォンの普及や時代の変化にともない、依存症の種類も多様化しました。「スマホ依存」「ゲーム障害」などの言葉は、テレビやインターネットのニュースで目にする機会も増え、社会問題として注目されています。依存症は一度症状が出てしまうと完治が難しい病気です。本書はその依存症について具体例を交えながら、依存する人としない人の違いや依存症の進行の仕方、依存症が起こるメカニズムなどを、メンタルマネジメントや環境、生活習慣の観点から図解でわかりやすく解説。

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