石油資源開発による健康被害、流産・死産が多発…日本では報じられない南スーダンの過酷な現状

TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」(毎週月~金曜7:00~)。「New global」のコーナーでは、南スーダンの石油資源開発の現状について取り上げました。

◆世界で最も新しい国で深刻な健康被害が…

「南スーダン」は2011年に独立した世界で最も新しい国で、2013~2018年までは内戦状態が続いていました。その際、日本の自衛隊が派遣されたことでも注目を集めましたが、現在も国民の3分の1が避難生活を続けています。

一方、南スーダンの原油生産量は世界36位で、国家収入の90%以上。完全に原油の生産と輸出に依存していますが、内戦中の油田攻撃や廃棄物の不適切な処理により、現在は人体や環境への深刻な悪影響が懸念されています。

日本のNGO団体「日本国際ボランティアセンター(JVC)」による最新のレポートでは、「南スーダンでは2つの州において石油の汚染が報告されている。一番多いのは水質の悪化による健康被害。そのほか、流産や死産などの事例が多数報告されている」とJVC東京事務所海外事業グループの橋口佑太さんは語ります。

現地の産婆さんなどに詳しく話を聞いてみると、高い確率で流産が発生しているそうで「普通に3割や4割、場合によってはそれ以上の比率で流産に」と橋口さん。

そうした状況であっても現地の人々は声を上げない現状があり、橋口さんは「南スーダンのユニティー州の方々は石油の問題について自分たちから話さない。なぜかといえば、紛争や洪水のことで忙しかったり、複合的な問題のなかで優先順位が下のほうにあるから。まずは関心を持ってもらうことが第一歩」と語ります。

JVCのレポートを見たキャスターの堀潤は「非常に厳しい現状」と危惧しつつ、「でも、このニュースが国内で報道されているかというと、ほとんど出てこない。なぜなら紛争が続いていて、さらに現場に行くのが困難だから」と指摘。

そして、「一方で国(南スーダン)もこうした状況を今まで表に出してこなかったところ、今回JVCチームが入ったときに大臣が池に魚が大量に浮かんでいる写真を見せ、助けてほしいという思いで支援の許可が出た」とレポートの経緯を解説します。

◆南スーダンの石油開発に日本企業が関与

そんな南スーダンの石油開発支援を巡っては、日本の企業も関係しています。それはウガンダからタンザニアまで総延長1,443kmにも及ぶ「東アフリカ原油パイプライン(EACOP)」の建設計画。

これまで南スーダンは北に位置する「スーダン」を通り原油を運んでいましたが、現在スーダンは内戦中。そのため、北に向かうにはリスクがあり、南にパイプラインを敷いていこうというのがこの計画です。

その建設計画には、みずほ銀行、三井住友銀行、三菱UFJ銀行など日本の企業が参画。すると環境団体からは抗議の声が上がり、その結果、3つのメガバンクが撤退を表明。しかし、他にもこの計画に関与している日本企業は多々あり、それらがどのような対応をするのか注目されています。

こうした状況に対し、関西大学特任教授の深澤真紀さんは「欧米などの環境団体は銀行や保険会社がどこに投資しているのか、厳しくチェックを行い、それに対してキャンセルするのが当然。株主すらそう。しかし、日本は残念ながらそうした状況にない」と言及。

さらに、「石油開発だけでなく鉱山開発においても、世界各地で水や空気が汚染されているが、それでしか生活が成り立たないところに対し、私たち先進国はそのモノだけをもらい、環境に興味を持っているかというとそうではない。残念ながら日本のメディアはそれを報じていない」と指摘します。

法律事務所ZeLoの弁護士・由井恒輝さんは「支援することによって経済的に潤い、環境が整備されるような側面もあるのではないか」と支援による現状打破を願うも、堀は「そこまでいけばいいが、実際には市民の暮らしには、経済合理性の観点からほとんど目が向かず、土地の強制収奪などがおこなわれるなどしているので、注意が必要」と案じていました。

※この番組の記事一覧を見る

<番組概要>
番組名:堀潤モーニングFLAG
放送日時:毎週月~金曜 7:00~8:30 「エムキャス」でも同時配信
キャスター:堀潤(ジャーナリスト)、豊崎由里絵、田中陽南(TOKYO MX)
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/morning_flag/
番組X(旧Twitter):@morning_flag
番組Instagram:@morning_flag

© TOKYO MX