赤ちゃん守るこだわり品質 1日500万枚の「メリーズ」を製造 【実はとちぎで作っています】⑨花王栃木工場

花王栃木工場

 幼い頃に誰もがお世話になったであろう「紙おむつ」。かわいい赤ちゃんのご機嫌はその性能にかかっているといっても過言ではない。紙おむつ「メリーズ」を作っている花王栃木工場(市貝町赤羽)にお邪魔し、赤ちゃんの笑顔を守るその秘密を探った。

 衣類や住まいの手入れに欠かせない洗剤や、ハンドクリームや育毛剤などでも有名な花王。栃木工場は1975年に操業を開始した。その広さは東京ドームおよそ4個分。紙おむつ、生理用品、掃除用紙製品などを生産し、「紙加工製品東日本供給拠点」として稼働している。紙おむつは国内に限らず、アジアを中心に13カ国にも販路を展開している。

 メリーズを製造する工場の中に入ると、最初に出迎えてくれたのはメリーズのキャラクター「メリーズうさちゃん」の写真スポット。公式ホームページには、「赤ちゃんがどこかを見て笑っていたら、うさちゃんがいるのかもしれないね」と紹介されている。子どもには実物が見えているのかも…。

 次に、紙おむつの性能を実験で教えていただいた。目の前には高吸水性ポリマー という砂状の材料が入ったコップ。そこに液体を流し入れると、ゼリー状に固まり、逆さまにしてもこぼれなくなった。紙おむつの中では高吸収性ポリマーが最大約4回分もの尿を瞬間的にゼリー状にする。さらに外側に付いている防水シートは目に見えない無数の穴が開いており、水は漏れないが空気は通る優れもの。これで「もれにくさ」と「かぶれにくさ」が保たれているわけだ。

 見学ゾーンへ入りガラス越しに製造ラインを見ると、そこには直径1.5メートル、約150キロもの巨大なパルプのロールがいくつも。これがおむつの材料になるらしい。この日は工場の製造ラインが停止していたため、ビデオで通常の紙おむつの2倍の柔らかさというメリーズの高級ラインアップ「ファーストプレミアム」の製造過程を見学した。

 まず最初にパルプを粉砕して綿状にし、高吸収性ポリマーと混ぜ合わせる。その粉末を紙でくるみ、べたつかない吸収体ができあがる。

 横漏れを防ぐ足回りのギャザーは水を弾く性質の不織布や糸ゴムで作られる。「おしっこお知らせサイン」も取り付けられる。色の変化でおむつ替えのタイミングがひと目で分かる、子育てに奮闘する両親の強い味方だ。

 その後、腰部分のギャザーを作るなどし、光を当てて異物混入やズレがないかを確認する。赤ちゃんの肌に触れ続ける紙おむつの品質は厳格に守られていた。

 細かな仕上げ作業を経てできあがった商品は圧縮してパッケージ、段ボールに詰められ、いざ赤ちゃんの元へ。この製造ラインが普段は高速で動き、1日に約500万枚ものおむつが作られるという。日本が誇る紙おむつの作り方を知ることができて、少し物知りになった気分だ。

 コロナ禍で停止していた工場見学もこの春、再開した。小久保真(こくぼまこと)工場長(56)は「私たちの知恵と工夫が詰まった製造現場をご紹介させてください」と話した。

 ちなみに私が愛用している花王製品「クイックルワイパー」も栃木工場で製造している。掃除機と雑巾がけのいいとこ取りをしたような神アイテム。作り方はシークレットな部分が多いようだったが、床にゴマをまいて実験を繰り返すまでした、執念の開発だったらしい…。

 私たちの生活に欠かせない数々の製品を作り上げる花王栃木工場の皆さまに頭が下がった。

 

 ◆花王豆知識◆

●社名の由来

 1890年に製造した顔も洗えるせっけんが、当時「顔洗い」と呼ばれていたことから“カオ(顔)石鹸”と名付け、「花王」の漢字が当てはめられた。

●ロゴマーク

 当初からロゴマークに使われていた月は美と清浄の象徴。これから満ちていく上弦の月の方が縁起がよいからという理由で、1943年、右向きから左向きに変わっている。

メリーズ
「メリーズうさちゃん」の写真スポット
高吸収性ポリマーの性能が分かる実験
「ファーストプレミアム」の製造ラインの見学ゾーン
様々な工夫が凝らされた「メリーズ」
パッケージに包まれ運ばれるメリーズ
小久保真工場長
クイックルワイパー立体吸着ドライシート

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