ジェットスター・ジャパン労働組合「ストライキ」見送り 「信頼している」会社の対応を評価

夏休み中の運航の混乱は回避された(ryohei / PIXTA)

格安航空会社(LCC)ジェットスター・ジャパンで働くパイロット、キャビンクルーが加入している労働組合ジェットスタークルーアソシエーションは、未払い賃金などをめぐりストライキを計画、会社との交渉を続けてきたが、直近の話し合いで大きな進展があったとして、8月16日、「争議権の行使についてはいったん見合わせること」を表明した。

労働組合は、今年5月に会社側に要望書を提出、以降、事務折衝、団体交渉を重ねて来たが満足な回答が得られず、8月3日に組合員による投票の結果により争議権を確立。17日以降に乗務員らによるストライキの可能性があるとしていた。

「全従業員に対して一括での支払い」

これまで組合側が会社に要求していたのは、以下3点。

①変形労働時間制における所定労働時間外の労働に対する未払い賃金をすべて払うこと
②(コロナ)休業期間中に新しい契約を結ぶことなく、労働者の承諾を採らずに減額された通勤費をすべて支払うこと
③組合事務所の提供、組合掲示板の設置

今回の話し合いで、会社側は①については、3か月~6か月の内に法定外残業、法定内残業、法定外休日手当についてさかのぼり計算し直し、全従業員に対して一括での支払いをすること。③については速やかに組合に提供することを約束したが、②についても会社は契約・手続きについての瑕疵(かし)を認めているが、一部遡求(そきゅう)、一部遡求しないとの回答であり、こちらは組合の顧問弁護士と相談の上で対応を考えていくとしている。

「その姿勢自体が安全にも影響がある」

8月15日に会見を行った労働組合の井小萩明彦執行委員は、これらの回答について「会社を信頼している。執行部としては評価できる」としていた。争議権を確立して、行使できる状態は維持されつつ、ストライキはいったん回避される。

井小萩明彦執行委員(8月15日 都内/弁護士JP)

井小萩執行委員は、航空会社のコンプライアンス、ガバナンスの欠如が安全におよぼす影響について問われ、 「法律で決められた賃金を払っていないという交渉の中で、話がまとまらず争議権という強い労働者に認められた権利を使わざるを得なかった。賃金だけではなく、他の何らかで法令を順守しない可能性があり、その姿勢自体が安全にも影響しかねないと考えます」と述べていた。

今後は、団体交渉で合意された取り決めを、労働協約として締結することを会社側に求める予定であるという。

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