【連載コラム】第25回:MLB公式サイトによる最新の模擬投票では3位 大谷サイ・ヤング賞の可能性は?

日本時間8月15日、MLB公式サイトは今季4度目となるサイ・ヤング賞の模擬投票の結果を発表しました。49人の記者が投票に参加し、1位票5ポイント、2位票4ポイント、3位票3ポイント、4位票2ポイント、5位票1ポイントで集計。投票者は現時点の成績を見るだけでなく、残りのシーズンで何が起こるかを予想したうえで投票することを求められています。

ナショナル・リーグは4人の投手に1位票が分散し、最多の1位票(21票)を獲得したのはブレイク・スネル(パドレス)でしたが、獲得ポイントでは1位票が14票だったザック・ギャレン(ダイヤモンドバックス)が上回りました。

1位票が3番目に多かった(9票)スペンサー・ストライダー(ブレーブス)は獲得ポイントでは4位となり、1位票が5票だったジャスティン・スティール(カブス)が獲得ポイントでは3位にランクインしています。スネルはメジャートップの防御率2.63を記録している一方で、与四球率5.26と制球面に大きな課題を抱えています。ストライダーはシーズン300奪三振を狙えるペースで三振を積み上げていますが、直近12先発で防御率4.52と調子を落とし、シーズン通算の防御率は3.75まで悪化してしまいました。そこにバランスの取れた成績を残しているギャレンとスティールが加わり、大混戦の様相を呈しています。

一方のアメリカン・リーグでは、リーグ最多の156回1/3を投げ、リーグ2位の防御率2.76をマークしているゲリット・コール(ヤンキース)が38人から1位票を獲得。キャリア初のサイ・ヤング賞が現実味を帯び始めています。それを追うのが、それぞれ1位票を6人、2人、2人から獲得したケビン・ゴーズマン(ブルージェイズ)、大谷翔平(エンゼルス)、ネイサン・イオバルディ(レンジャーズ)といった面々。さらに、リリーフで支配的なピッチングを見せているフェリックス・バティースタ(オリオールズ)にも1位票が1票だけ入りました。現時点ではコールが最有力候補ですが、残り約7週間のレギュラーシーズンでどのように変動するか注目されます。

さて、今回の模擬投票ではア・リーグの3位に入った大谷ですが、実際のところ、サイ・ヤング賞を受賞する可能性はどれくらいあるのでしょうか。

日本時間8月15日の全試合が終了した時点で、大谷はリーグ7位タイの10勝、リーグ8位の防御率3.17、リーグ4位の165奪三振を記録しています。中4日での登板が1度もないため、投球イニング数はリーグ17位タイの130回2/3にとどまっていますが、昨年は175イニングのジャスティン・バーランダー、2021年に167イニングのコービン・バーンズ、2018年に180回2/3のスネルが受賞したように、近年のサイ・ヤング賞投票では、投球内容自体が優秀であれば、投球イニング数はあまり重視されない傾向があります。

先日、データサイト「ファングラフス」の記事内でも言及されていましたが、近年のサイ・ヤング賞投票で最も重視されていると思われる指標は防御率です。直近5シーズンの受賞者10人のうち、防御率リーグ1位が7人、2位が3人で、2位の3人も1位との差は0.12以内に収めています。つまり、大谷がサイ・ヤング賞を受賞するためには、現在リーグ8位の防御率を1位のイオバルディ(防御率2.69)や2位のコール(防御率2.76)に限りなく近づけていくことが必要になります。

仮に大谷が今季あと7試合先発して平均6イニングを投げるとすると、防御率を2.70前後まで向上させるには、1試合あたり1失点しか許されません。このピッチングができれば、勝利数と奪三振数もおのずと増え、投手の主要3部門で見栄えのいい数字が並んでいることでしょう。

大谷は昨季の最終7先発で45イニングを投げて合計5失点(防御率1.00)というピッチングを見せています。3月のWBCから働きづめという疲労の蓄積は心配ですが、昨季終盤のパフォーマンスを再現することができれば、日本人初のサイ・ヤング賞に手が届くかもしれません。

文=MLB.jp 編集長 村田洋輔

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