<社説>ハワイ山火事 沖縄から被災者支えよう

 米ハワイ・マウイ島に甚大な被害をもたらした山火事の発生から9日となった。死者は200人を超える可能性がある。被災地の復興には長い年月がかかると予想されている。ハワイと深い関係がある沖縄から島の復興を支え、被災した人々への支援の手を差し伸べたい。 マウイ島の火災は8日に発生し、炎が急速に市街地に広がった。島西部の観光地ラハイナが壊滅的な被害を受けた。16日現在で死者は100人を超えた。

 ハワイ州のジョシュ・グリーン知事は「われわれは多くの悲劇を覚悟している」と述べ、連絡がつかない住民らが約1300人に上ると説明した。今年1月までマウイ郡トップを務めたマイケル・ビクトリーノ前郡長は、ラハイナの復旧に「少なくとも5~8年を要する」との見通しを示した。

 1959年にハワイ州が誕生して以来、最悪の自然災害となった。なぜ、ここまで被害が拡大したのか。

 一つは気象上の問題である。ハワイ諸島南方を通過したハリケーンの影響による強風で、火が急速に広まったとみられている。気候変動による高温・低湿度によって大規模火災が誘発されたとの見方がある。

 もう一つは防災態勢の問題だ。ハワイ州当局は、8日の火災発生時に警報サイレンが作動した形跡がないことを明らかにしている。危険を知らせる通知が一切届かなかったという証言が住民から出ている。停電もあって情報が行き渡らず、被害拡大につながった可能性がある。

 出火原因は判明していないが、地元電力会社が危険回避措置としての計画停電に踏み切らず、切れた送電線が出火原因になったと疑う声がある。

 これらの問題は沖縄も無縁ではない。今後出てくる現地の検証結果を踏まえ、沖縄の防災・防火の在り方を再確認する必要があろう。

 気がかりなのが沖縄県系人の消息である。沖縄ハワイ協会には現時点では県系人の死者はいないが、財産を失った人がいるという情報が入っている。沖縄からハワイ復興を支え、県系人ら被災者を支援したい。

 既に支援の輪が広がっている。県は公金で見舞金を支出する方針を固めた。沖縄ハワイ協会も募金運動に動き出している。マウイ郡と姉妹都市関係にある宮古島市は市役所職員に義援金の協力を呼びかけている。琉球新報社は17日から義援金を受け付ける。

 沖縄とハワイは歴史的に深いつながりがある。1900年代初頭から移住地と母県という関係を築いてきた。沖縄戦の後、ハワイ県系人は豚を贈り、沖縄の復興を支えた。近年では焼失した首里城の再建に向け、ハワイの県人会から寄付金が寄せられた。

 今回は私たちがハワイの被災者を支える番だ。具体的な行動で沖縄の真心を届けたい。

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