「ふくみち」初の長期開催 歩きたくなる演出磨こう

 【論説】新たな都市像を示すキーワードの一つに「WEDO」がある。Walkable(ウオーカブル)、Eyelevel(アイレベル)、Diversity(ダイバーシティー)、Open(オープン)の頭文字を組み合わせたもので、「居心地が良く歩きたくなる」まちなかに共通する特徴とされる。

 福井市のJR福井駅周辺で、「WEDO」の視点から快適な道路空間創出を目指すプロジェクト「ふくみち」が展開されている。今回は1カ月にわたる初の長期開催。期間中のワンパークフェスティバルや福井フェニックスまつりといった大型イベントとも連携し、飲食事業者などのキッチンカーやブースのほか、さまざまなワークショップなども企画される。

 福井駅西口一帯の再開発事業は多くが工事中のまま、来年春の北陸新幹線延伸を迎える。道路を単なる通るためだけの空間から、それ自体が目的地となり、にぎわいを生み出す空間にする「ふくみち」の取り組みは、“未完成”のまちを補完する意味で重要だ。

 ふくみちは、民間事業者の道路利用に必要な占有許可を柔軟に運用する国の「歩行者利便増進道路(通称ほこみち)」制度に基づく。福井市では2024年度の同制度本格運用に向けた試行事業の位置付けで定期的に行われている。22年6月に17日間行った際は、平日の通行量が通常の3倍に増え、特にランチタイムに人通りが目立った。

 国土交通省や警察庁などが22年にまとめたガイドラインでは、米ニューヨークの事例を紹介している。車道や駐車スペースなどを見直して歩行者のための空間を拡充し、周辺の公園や店舗などと一体的に整備することで、歩行者が増え店舗の売り上げが伸びるなどの効果が出ているという。全国的には違法駐輪・駐車が減少した事例もある。

 「WEDO」の根幹は、都市の在り方を従来の車中心から人中心に転換し、歩行者が居心地のいい空間をつくる考え方だ。多様な人が集まり交わることは、地域課題の解決に向けた新たな発想を生み出す環境整備にも位置付けられる。

 猛暑の中で行われている今回のふくみちでは、ミストシャワーや風鈴の設置、観葉植物の展示販売といった演出がある。歩行者の目線と同じ、ビルなどの1階部分の意匠も散策を楽しむ上で大切な要素になる。周辺店舗と一定のコンセプトを共有し統一感のある空間をつくるなど、滞在時間を増やす演出をさらに磨き上げていくべきだ。

© 株式会社福井新聞社