「島の新規就農」支援 離農農家の園地で研修、継承も 愛媛・JAおちいまばり

「新規就農サポート事業」を修了し、今年1月から大三島で独立就農した佐藤さん(愛媛県今治市で)

愛媛県のJAおちいまばりは、今治市の大三島で、高齢で離農するかんきつ農家から園地を引き継ぎ、就農希望者の研修園地に活用する「新規就農サポート事業」で成果を上げている。希望をすれば研修園地にそのまま就農できるため、スムーズに農業経営を始められる。2017年の事業開始から11人が独立就農し、高齢化が進む島しょ部の農業を支えている。

JAによると、大三島のJA上浦地区青果部会の出荷者数は10年前に比べて30~40人減って約200人。平均年齢も70代後半と高齢化が進み、耕作放棄地も年々増えていた。JAは地域の担い手確保のため、17年に同事業をスタートした。

同事業は、高齢で出荷を取りやめたり、離農したりする農家から同JAが農地を借り受け、毎年1~3ヘクタールを就農希望者の研修園地として活用する。経験豊富なJA職員が、温州ミカンやレモンなど地域の特産果樹10品目の植え付けから収穫・選果までを少人数制で指導。農業機械の使い方や農業経営の座学講義も行う。研修生は2年間のカリキュラムで農業経営に欠かせない基本的な知識や技術を全て身に付けられる。

その上で、同事業の最大の特徴は、島内で就農を希望すれば、研修園地を引き継いで農地を確保できること。関西地方で会社員をしていた佐藤真弓さん(41)は同事業を経て、今年1月に独立就農した。現在は、キウイフルーツやレモンを中心に70アールで栽培する。佐藤さんは「栽培技術の指導や農地の確保など、JAからの幅広いサポートがあったので、安心して就農できた」と話す。

研修生は全国各地から集まり、JAでは毎年1~4人を受け入れている。指導する営農企画課の高本圭さん(33)は「事業の認知度が高まって高齢農家から園地を引き継ぐ体制が整ってきた。より多くの担い手を育てて、島の農業を支えていきたい」と力を込める。 西野大暉

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