北海道で風力発電計画相次ぐ その可能性は!?

今回のテーマは「風力発電」。再生可能エネルギーのひとつとして注目されており、北海道はその適地とされている。

【小樽では直前で撤回も…欠かせない市民の理解】

大手総合商社の「双日」は、小樽から余市にまたがる山に2029年の稼働を目指し、26基の風車を建設する計画だった。

2019年から調査を進め、ことし1月。双日が市に「準備書」を提出。再エネを推進する小樽市だが、市民の反対の声は大きく、議会も全会一致で計画に反対した。

小樽市の迫市長

小樽市の迫市長は、①環境(生態系)への影響②土砂災害への懸念③景観への影響④自然遊歩道への影響の4つの観点から反対の決断を下したという。市として再エネを推進している中、苦渋の決断だったと話す。

後志には、実はまだほかにも風力発電の計画が。関西電力が2つのプロジェクト。仁木に64基、赤井川に22基。まだ最初の計画段階で、どこに建てるかなど具体的な内容は今後提示される。

【稚内港は関連資材で埋まる 巨大ブレードも】

深夜2時。稚内港の近く。暗闇の中からやってきたのは、トレーラー。約60メートルにおよぶ巨大な物体を運んでいる。カーブも簡単には曲がれない。後ろの車体をリモコンで操作し、少しずつ曲がって通り抜ける。

深夜に運んでいたのは、風車の羽根・ブレードだ。稚内港は、去年から大型の風力発電資材で埋まっている。大型船で上海などから次々と運ばれてきた海外メーカーの資材だ。

現在、道北地区で進んでいる日本最大規模の風力発電開発。豊田通商の子会社ユーラスエナジーホールディングスなど3社が、2025年にかけて、なんと127基の風車を建設する計画。全てが完成すると出力は54万キロワットに。北海道の電力における風力の割合は倍増する。

開発で着目したのは、宗谷の強い風。そして、建設費用を抑えることができる「なだらかな地形」だ。稚内市の表さんは「インタビューに答える今も、髪が風でなびいている。このように風の強い地域なので、風力発電の建設地として適している」と話す。

インタビュー中にも強い風が吹き続けていた

ただ、北海道の風力発電には大きな課題がある。「送電網」だ。風力発電所から電気を送る手段が限られている。

今回の事業は、課題解決にむけた資源エネルギー庁の送電網強化の実証事業。補助金は400億円。総事業費1050億円の大プロジェクト。風力発電のために全長78キロの送電網を整備した。そこには世界最大規模の蓄電所も。これで天候に左右されずに送電量を一定に保つことができる。

宗谷岬の丘には2005年に稼働した風車57基が回っている。約20年前から風力発電に取り組む稚内市は、円滑な導入を進めるために「稚内市風力発電施設建設ガイドライン」を策定している。環境や景観、地域住民を守りながら、風力発電を取り入れている。

【石狩湾新港では洋上風力 ユーザーの誘致も】

石狩湾新港では、巨大な風車が14基、建設中だ。

石狩湾新港は石狩市、小樽市、そして道が共同で管理をしている。洋上ではSEP船と言われる作業船が工事を進めている。

石狩市は再エネ産業を集積する「スマートエネルギー構想」を掲げている。石狩湾新港エリアの「再エネ100%ゾーン」に建設中の京セラのデータセンター。風力発電、太陽光発電、バイオマス発電を活用し、再エネ利用率100%を目指す。中長期的に体育館などにも拡大。新たな進出企業への需要拡大も目指す。風力発電だけではなく、電力を使う“ユーザー”の誘致も進めているのだ。

グリーンパワーインベストメントの藤田さん(左)

この事業で、洋上風力発電の建設において国内で初めてという点がいくつかある。ひとつは規模。1基あたり8000kWという国内最大規模だ。他にも、基礎を矢倉方式にした点、洋上風力発電設備と蓄電池を組み合わせた点などがある。

風車自体は海外製だが、基礎などは日本製。国内調達比率は6割以上に及ぶ。

先月、「石狩市沖」の他に「島牧沖」や「檜山沖」など5つの区域が洋上風力の「有望な区域」に選定された。今後、地元や漁業者などとの協議を経て「促進区域」の指定を受けることで北海道の洋上風力発電事業は大きく前に進む。

ポテンシャルの高い北海道で建設が進む風力発電。北海道経済の“追い風”になるかもしれない。
(2023年8月19日放送 テレビ北海道「けいナビ~応援!どさんこ経済~」より)

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