聖地でのカップ2戦目トップ10が後押しか。来季NASCAR挑戦が濃厚なSVGの後任は初代TCR王者に

 世界的な話題を振り撒くオーストラリア最高峰のツーリングカー選手権、RSCレプコ・スーパーカー・チャンピオンシップでシリーズ3冠に輝き、先日はNASCARの聖地インディアナポリス・モーター・スピードウェイ(IMS)で2度目のスタートを切った王者“SVG”ことシェーン-ヴァン・ギズバーゲンが、所属先のトリプルエイト・レースエンジニアリングと2023年限りでの「早期契約解除」で合意した。

 来季カップシリーズ転向に正式な“GOサイン”が灯ると同時に、チームは新たな後任候補として、こちらもエレバス・モータースポーツとの早期契約解除となった初代TCRオーストラリア王者、ウィル・ブラウンの加入を正式発表している。

 カップシリーズとしても初開催となった7月のシカゴ市街地戦で、約60年ぶりとなる衝撃的デビューウインを決めたSVGは、その成功を受けIMSのロードコースで開催された第24戦『ベライゾン200・アット・ザ・ブリックヤード』にも出場。同週末の金曜にはインディアナポリス・レースウェイ・パーク(IRP)でのNASCARクラフツマン・トラック・シリーズ『TSport 200』にもエントリーし、ニース・モータースポーツのシボレー・シルバラードRSTでオーバル実戦デビューも果たした。

 明けた土曜にIMSヘと移動したSVGは、引き続きトラックハウス・レーシングがスタンバイした国際ゲスト招聘枠“プロジェクト91”のシボレー・カマロZL1をドライブし、予選シングルの8番手グリッドを獲得。決勝では長くアンダーグリーンの続いたレースで10位入賞を果たしてみせた。

「地元とはドライブのペースが異なるだけさ。現時点ではV8を積んだ重量級のクルマを非常に激しい競争環境のなかでドライブしなくちゃいけないし、ゆっくりと繊細に操作することを心掛けた。それをレース全体を通じて全力で取り組まなくちゃいけないんだ。本当に楽しいよ」と、改めて“聖地”でのカップ2戦目を振り返ったオーストラリア王者。

 シカゴ市街地では、雨のためイレギュラーな1列縦隊のリスタートが義務付けられたが、今回の新しい経験はスタート直後にたった1回となったリスタートが、従来のタイトな2列だった点だ。

「とても良かったよ。誰もがシカゴよりはるかにアグレッシブだったが、僕自身もそれを予想していた」と続けたSVG。「悪い内容でも過度に攻撃的でもなかったし、まさに僕が期待していたとおりのレースだった。誰もが公平で、すべて良かったね」

「(金曜の)トラックシリーズも楽しかったし、この1週間を通してつねに学び、どんどん良くなっていった。それに初オーバルを通じて専門用語も理解し、アンダーステアとかオーバーステアとか言うのをやめたよ。『ここはルーズ、こっちはタイト』ってね!」

 そんなSVG自身、シカゴ市街地での勝利直後は「来季2024年終わりまで豪州での契約が残っている」とRSCでの契約履行と遵守に意識が向いていたが、南半球への凱旋後にも勝利を挙げ、現在も4勝でシリーズ4冠目に挑む状況も踏まえ、カップ2戦目の出場が決まる頃には「チームにとって適切な後任候補が見つかるよう、僕自身も惜しみないサポートを続けたい」と態度をやや変化させていた。

「僕らは(NASCARでの契約合意に)近づいているが、何も解決していない。まずオーストラリアを整理しなければならないんだ。それは有望に見えるが、ここで何かを考え出し実現できればすぐに(NASCARへ)移ることができるだろう」

カップシリーズとしても初開催となった7月のシカゴ市街地戦で、SVGが約60年ぶりとなる衝撃的なデビューウインを決めた
その成功を受け、先日はIMSのロードコースで開催された第24戦『Verizon 200 at the Brickyard』にも出場した
Trackhouse Racingがスタンバイした国際ゲスト招聘枠『PROJECT 91』のシボレー・カマロZL1を引き続きドライブし、予選シングルの8番手グリッドを獲得。決勝では長くアンダーグリーンの続いたレースで10位入賞を果たした

■SVGのNASCAR挑戦を支持するジェイミー・ウインカップ

 そう語っていたSVGの言葉どおり、この8月16日付けで声明を発表した所属先のトリプルエイトは、週末のIMS時点で後任候補と噂されていた現RSCタイトルコンテンダーのブラウン加入を正式発表しただけでなく、これまで3回のチャンピオンシップと聖典『バサースト1000』での2勝を含む通算67回の勝利を挙げたSVGとの1年早い契約解除を認め、双方の8年間にわたる関係に終止符が打たれることとなった。

 そのチームリリースは「トリプルエイト・レースエンジニアリングは、2024年からレッドブル・アンポル・レーシングに3年契約で加入するウィル・ブラウンとの契約を発表できることに興奮しています」との書き出しで始まった。

「25歳の彼は実績あるレースウイナーであり、このカテゴリーでもっともエキサイティングな才能のひとりです。チームは2024年1月に、この新しいパートナーシップを祝うことを楽しみにしています」

「この発表は、チームが“SVG”ことシェーン-ヴァン・ギズバーゲンによる『2024年以降も海外カテゴリーでレースをする夢』を探求することを支持し、それを許可することに同意したことを受けて実現しました。それまでの間、チームは2023年のチャンピオンシップ獲得に全力を注いでいきます」

 このリリース公開に際し、当初からSVGの海外挑戦を公に支持するコメントを発表してきたトリプルエイトの現マネージングディレクター、ジェイミー・ウインカップも「当初から明らかにしてきたように、我々トリプルエイトは彼のワールドクラスの才能を海外で披露するという決定を心から支持している」と、改めてその見解を示した。

「先月シカゴで目撃したように、彼が今後もトラックを引き裂き続けるのを見るのを楽しみにしている。一方でウィル(・ブラウン)は(RSC下部シリーズの)スーパー2でトリプルエイトのマシンをドライブして以来、長年にわたって我々の注目を集めてきた」と、RSCで実に“7冠”を誇るレジェンドのウインカップ。

「彼はトラック上で見るのがエキサイティングなドライバーで、非常に人柄が良く、そしてもっとも重要なことに、我々の文化に非常によく適合している。(所属する)ブロック(・フィーニー)と彼は一緒にレースをして育ち、サーキットを離れても友人であるという事実はボーナスだね」

「もちろん、今季ドライバーズとチームのチャンピオンシップを獲得するための戦いはまだ残っており、それがトリプルエイトの当面の焦点であり続ける」

 今季のRSCは残り9レースとなり、前述のとおり今季導入の“Gen3”カマロZL1で4勝を挙げているSVGは、同じくIMSでカップ参戦を果たした好調コカ・コーラ・バイ・エレバスのランキング首位、ブロディ・コステッキ(エレバス・モータースポーツ/シボレー・カマロZL1)と、そのチームメイトで同ランク2位のブラウンに対し、タイトル防衛を掛けて挑む構図となる。

地元RSCでは今季導入の”Gen3″カマロZL1に手こずりながら、すでに4勝を挙げて4度目のタイトル獲得に挑む
現在はTriple Eight Race Engineeringでマネージングディレクターを務めるジェイミー・ウインカップ(右)も「当初から明らかにしてきたように、彼の意思決定を心から支持している」と、改めてその見解を示した
SVGの後任候補としてTriple Eight入りが決まった初代TCR王者ウィル・ブラウンも、今季RSCのタイトル候補に並ぶ

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