「海遍路・神奈川」に出発 逗子在住の海洋冒険家

 海洋冒険家の八幡暁(さとる)さん(41)=逗子市=らが19日、県内の沿岸部全域をカヤックで巡る実地調査「海遍路・神奈川」の旅に出た。八幡さんはこれまで、「海遍路」として四国一周や東日本大震災後の東北沿岸、干拓事業が問題となっている九州北西部の有明海を巡ってきた。今回の狙いは「自分の住む都市近郊の海と里で、人々が海とどう向き合い暮らしているのかを、海からの視点で見ること」と話している。

 スタートは、小田原市の早川河口。小田原近海は定置網漁で知られ、かつてはブリが年間60万匹取れていたが、5年ほど前には年間300匹にまで減少している。海遍路のメンバーで海と里、山の関係の研究で知られる京都大名誉教授の田中克さん(73)は「海流の変化を理由とする説もあるが、もはやそんな説明は通用しないレベル。開発による自然環境の多様な変化が影響している」と指摘する。

 海遍路では、そうした自然環境と開発の関係を調べたり、漁港の様子を見たり、地元漁師から聞き取りなどを行っていく。八幡さんは「都市部では人と海の関係が地方とは異なる。違いも肌で感じたい」と話す。

 20日には大磯町を出て、藤沢市の江の島、逗子市、葉山町、三浦市の油壺、金田漁港、横浜市の金沢八景などに立ち寄り、約10日間かけてゴールの川崎市を目指す。

 22日には逗子市で、地元の子どもや大人たちと、海から川をさかのぼり水源を探すフィールドワークを行う。午前9時に逗子海岸なぎさ橋下をスタート。午後2時から5時までは「森、里、川、海」と人や地域の関係を取り戻す具体策を提案するシンポジウムを開く(いずれも参加無料)。会場は逗子開成高校徳間記念ホール(同市新宿)。問い合わせは、八幡さん電話080(9240)8905。

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