機織り継承へ力 茨城・常陸大宮の市民団体 綿花栽培、道具も手作り

複雑な下準備を終え、機を織る「綿の会」のメンバー=常陸大宮市小祝

茨城県常陸大宮市内の女性たちで組織する市民団体「綿の会」が、農村などで代々受け継がれてきた機織り技術の継承と普及に力を入れている。畑に種を植え、綿花を育てて糸をよるところまで、全て自分たちで手がける。使う道具も手作りだ。技術を磨く傍ら、近隣の小学校で糸紡ぎを伝えるボランティアも行っており、地域の文化を掘り起こし、次世代へつなげる役割を担っている。

綿の会は同市歴史民俗資料館の小祝分館を拠点に、40代から70代の女性8人が所属する。同館に週に1回集まり、寄贈された糸車や機織り機で布を織り、ショールやジャケットなどを思い思いに制作してきた。

室内作業にとどまらず、同市小倉の大宮ふれあい農園では炎天下の中、綿花畑の手入れにも励む。会員の野々村幸恵さん(67)は「種から育てて糸をよる。原料から作るのが綿の会の特長」と胸を張る。

同会の前身は同館で1991年ごろに活動を始めた「はたおりの会」。同市西塩子地区に伝わる農村歌舞伎「西塩子の回り舞台」復活の際には、舞台の緞帳(どんちょう)部分となる「平成の大幕」作りに携わった。資料に乏しく、作業は手探りで行われた。先代の大幕が作られた江戸時代の方法に習い、材料の綿を栽培することから始めた。

地域全体で綿を育て糸を紡いで、2006年に大幕が完成。復活させた技術を受け継ぐため、同会は現在も綿の栽培から行う。同市郷土資料館職員、宇留野美雪さん(69)は「子どもたちが伝統に興味を持ち、昔の暮らしを知るきっかけになっている」と評価する。

美しく仕上げるためには、糸巻きや縦糸作りなど、多様な工程を全て正確に行う必要がある。太い横糸を通すための板杼(いたひ)や、糸を巻き付ける管(くだ)をはじめ、細かな道具は手作り。「道具も手作りと知って驚いた。自分で作ったが、先輩方には全然かなわない」と新入会員は笑う。

6月には同市の道の駅常陸大宮で開かれた「かわプラザ工芸フェス」に初出店。同会の取り組みを初めて知ったとの反響が寄せられたという。拠点の老朽化が進み、活動規模の拡大は難しいなど課題もある。それでも、野々村さんは「常陸大宮の機織りは多くの人が真剣に受け継いできた文化。多くの人に魅力を知ってもらいたい」と力を込める。

種から綿を育て、布を織る「綿の会」のメンバー=常陸大宮市小倉

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