探し方から工具、床や壁の工事まで「古民家ひとりリノベ」のワザ伝授 滋賀の1級建築士出版

セルリノベーションを勧める本「空き家改修の教科書」を出版した福井さん(滋賀県高島市マキノ町在原)

 空き家となった古民家を自らの手で改修するセルフリノベーションを勧める本「空き家改修の教科書」を、滋賀県高島市マキノ町在原の1級建築士の福井朝登さん(50)が出版した。これまで8軒の空き家の改修に携わった知識や技術をイラストと写真を用いて分かりやすく伝えている。

 大阪市出身の福井さんは29歳の2002年に「自らの力で生きていきたい」と田舎での生活を意識し、京都市内の設計事務所を辞めて在原地区の築150年のかやぶき民家を購入。改修は未経験だった。ガソリンスタンドで深夜アルバイトをしながら昼に改修し、いつでも作業できるように敷地内にテントを張った生活も実践。7年かけて再生した。

 その後、移住促進を手掛ける市内のNPO法人「結びめ」が開いた「空き家改修講座」の講師を務め、参加者とともに木造古民家を改修。同法人がクラウドファンディング(CF)で行った空き家改修事業にも携わった。この取り組みをまとめた本を同法人が自費出版してCFの返礼品とした。好評だったことから今回、加筆して新たに出版した。

 本では、空き家の探し方や平面図の描き方、工具の紹介といった基本のほか、屋根や床、土壁など自らできる工事はイラストや写真をふんだに使って紹介。中でも土壁の骨組みとなる「竹小舞(たけこまい)」のイラストを掲載している例は珍しいという。

 福井さんは今、在原地区にある老朽施設を田舎暮らしの体験施設へ改修しており、ゆかりの歌人在原業平の歌から「くくるとは」と名付けた。福井さんは「空き家のセルフリノベーションは移住者増へつながるので、参考にしてほしい。今後も在原への恩返しの思いで空き家再生を手掛けたい」と話している。

 学芸出版社刊、B5判、112ページ、2200円。19日には「くくるとは」で廃屋建築家の西村周治さん(神戸市)を招いた出版記念のトークイベントを開く。2千円(ドリンク付)。申し込みは氏名と住所、連絡先、交通手段を記入し、18日午前までにメールで結びめinfo@musubime.tvへ。

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