「今後の仕事と育児・介護の両立支援に関する研究会報告書」からわかるワークライフバランス

日本は出生数が7年連続で減少し、2022年にはおよそ777万人と過去最少でした。
加えて、2040年頃には団塊ジュニア世 代が 65 歳以上となり、高齢化率(総人口に占める 65 歳以 上人口の割合)が増していくとされています。
人口は減っていく中で人の寿命は延び、ライフステージも変わってきました。
このうち仕事に関わる人生の大きな転換期としてよく取り上げられるのが、育児期と介護期です。
「仕事が忙しくて育休が取れず、育児に参加できない」、「親の急な介護のために仕事を辞めざるを得ない」などさまざまな声が聞かれます。
私も福祉や介護の現場に勤めていた時があり、実際にそのような声を多く聞いたことがあります。
「育児や介護は大変らしい」ことは知っているが、実際に自分自身で経験してみないと実感できないものも多いと思います。
最近では育児休暇、介護休暇を積極的に取得していこうと国の呼びかけも多く聞かれますが、実際はどうなのでしょう。
今回は、厚生労働省が2023年6月19日に発表した「今後の仕事と育児・介護の両立支援に関する研究会報告書」をもとに現状や今後の課題について解説していきます。

「今後の仕事と育児・介護の両立支援に関する研究会報告書」の総論

報告書では、今後の両立支援制度の検討にあたっての基本的な考え方として、「ライフステージにかかわらずすべての労働者が『残業のない働き方』となっていることをあるべき方向性として目指す」として、以下の点を基本として継続的に取り組んでいくことが示されています。

・ 男女が共に望むキャリアを実現
・ 働き方改革の推進
・ 育児期・介護期の支援

「今後の仕事と育児・介護の両立支援に関する研究会報告書」で見直しが行われた項目

また、仕事と育児の両立支援制度については、以下の点の見直しが図られています。

・ 制度の利用状況や、育児・家事負担に男女差がみられる。男性の育児休業取得のさらなる促進のため、制度の活用をサポートする企業や周囲の労働者に対して支援
・ 子の年齢に応じた両立支援のニーズの変化への対応(残業をしない働き方や柔軟な働き方へのニーズへの対応、小学校就学以降にスポット的に対応できる休暇のニーズへの対応)
・ 障害児や医療的ケア児を育てる親、ひとり親家庭など、多様な状況にある労働者への配慮

さらに、仕事と介護の両立支援制度については、以下の点の見直しが図られています。

・「介護の体制を構築するため」の介護休業制度や、「日常的な介護のニーズにスポット的に対応するため」の介護休暇制度等、両立支援制度の趣旨を理解した上での効果的な利用を促進(介護に直面した労働者への個別周知、介護に直面する前の早い段階からの情報提供、研修等の雇用環境の整備)

このほか、働き方としては、以下が示されています。

<子どもが3歳までの短時間勤務制度>
・ 1日6時間とする措置は必ず設ける:さまざまなニーズに対応するため、 1日6時間を設けたうえで、ほかの勤務時間もあわせて設定することを促す
・ テレワークを努力義務(3歳になるまで)を追加
<子どもが就学までの短時間勤務制度>
以下から複数の制度を選択して措置。(フルタイムでの柔軟な働き方も含む)
・ 短時間勤務制度
・ テレワーク
・ 始業時刻の変更等(※)
・ 新たな休暇の付与
<子の看護休暇>
・ 取得目的、勤続6か月未満の労働者の取扱いなどを見直す
・ 就学以降に延長(小学校3年生まで)

まとめ

今回の研究報告書では、より柔軟な働き方への課題が多く見受けられます。
在宅でも行えるテレワークや、短時間勤務以外でもフルタイムも含む内容もあったりと個人への選択肢を増やしていく姿勢が感じ取れます。
「産業保健新聞」運営元のドクタートラストでも「育児休暇から復帰したいのに保育園に子どもを預けることができない……」という社員の悩みから、オフィス内に小規模事業所内保育施設(よつば保育室)を開園したりと出産や育児に柔軟な選択肢を用意しています。
劇作家ウィリアム・シェイクスピアの「ハムレット」に出てくる有名な言葉に「人生は選択の連続だ」という言葉があります。
また、ケンブリッジ大学Barbara Sahakian教授によると、人は1日のうちに約3万5,000回もの選択をしているそうです。
国や会社が育児や介護に多くの選択肢を用意し、それに対して個人が望むものを選択できることでひとり一人のワークライフバランスを維持していけることでしょう。

<参考文献>
・ 厚生労働省「令和3年簡易生命表の概況」
・ 厚生労働省「今後の仕事と育児・介護の両立支援に関する研究会報告書」

投稿 「今後の仕事と育児・介護の両立支援に関する研究会報告書」からわかるワークライフバランス産業保健新聞|ドクタートラスト運営 に最初に表示されました。

© 株式会社ドクタートラスト