若きフェルスタッペンとの契約、飛び級でF1に乗せることは「かなり勇気のいることだった」とマルコ

 レッドブル・レーシングのモータースポーツコンサルタントを務めるヘルムート・マルコには、まだ10代だったマックス・フェルスタッペンを発掘して契約したことについて大きな功績があるだろうが、その決断は大きく裏目に出る可能性もあったことを認めている。

 レッドブルはフェルスタッペンがまだ16歳の時に契約を結んだ。フェルスタッペンは17歳と166日の若さで、2015年オーストラリアGPでトロロッソからF1デビューを飾り、F1の史上最年少ドライバー記録を破った。彼はすぐにF1に影響を及ぼすようになったが、初期の頃には避けられないミスをしたり、コース上での激しいドライビングスタイルで他のドライバーを怒らせて敵を作ったりしたため、すぐに成功したわけではなかった。

 しかし一旦すべてのことがうまくいくようになると、フェルスタッペンはまもなく無敵の存在になった。2021年の世界選手権では最終戦アブダビGPの最終ラップに首位に立ってタイトルを獲得し、2022年も2回目のタイトルを獲得した。今年は現在ランキング首位に立っており、2位に125ポイントの大差をつけている。

2022年F1第18戦日本GP マックス・フェルスタッペン(レッドブル)が優勝でドライバーズタイトルを獲得

 マルコは、もしフェルスタッペンとレッドブル全体にとってよい展開にならなかったら、チームと特にマルコは、これほど若い年齢のフェルスタッペンと契約する決断をしたことですぐに批判を浴びただろうと述べている。

「何か起きていたらどうなっただろう? もちろん当時なら世間から非難されただろう」とマルコは『Young Economist』に語った。

「その後は制度も変わり、現在は(スーパーライセンスを得るには)18歳でなければならない」

 しかし当時でさえ、マルコはフェルスタッペンがルイス・ハミルトンやミハエル・シューマッハー、そしてアイルトン・セナらと並ぶ、一世代にひとりの才能の持ち主であることを証明するだろうと確信していた。

「フェルスタッペンの場合はすでに明白だった」とマルコは説明し、フェルスタッペンが少年の頃にカートレースで圧倒的優位に立っていたのは明らかだったので、マルコはマックスの父親ヨスに、ジュニアチャンピオンシップを飛ばしてまっすぐF1に行くべきだと助言したという。

「私はすでにフェルスタッペンと話をしていた。私はF3や他のクラスについて触れたが、結局ヨスにこう言った。『それは忘れて、F1にしよう』とね。当時としてはかなり勇気のいることだった。電話からはしばらく何も聞こえてこなかった。彼はとても驚いていた」

「当時はセンセーショナルにうまくいった。彼は愚かなことも何度かやったが、22歳になっても同じことをしているドライバーはいる。証拠はある」

「このようなドライバーは10年に一度見つかる。それは並外れたことだ」

2023年F1第13戦ベルギーGP マックス・フェルスタッペン(レッドブル)

 フェルスタッペンはトロロッソで23レースに出場し、2016年シーズン序盤のスペインGPからレッドブルへ昇格してダニエル・リカルドのチームメイトになり、そして初めての優勝を飾ってみせた。

 フェルスタッペンは予選が弱点であることがわかったが、2019年のハンガリーGPではとうとう初めてのポールポジションを獲得した。それ以来、フェルスタッペンは合計175レース中27レースでポールポジションからスタートし、45勝を挙げている。まだ25歳のフェルスタッペンが、これからのF1での年月でハミルトンが持つ104回のポールポジションと103回の優勝の記録を追い越すことは容易に想像できるし、ハミルトンとシューマッハーの持つ7回のタイトル獲得記録さえ上回るかもしれない。

 2007年にセバスチャン・ベッテルをレッドブルファミリーに迎えていたマルコが、フェルスタッペンと契約するという決断が正しかったと感じていても驚きではない。

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