是枝裕和監督作品への出演“匂わせ”副業あっせん? “現役プロデューサー”が「偽メール」に怒り心頭

俳優らのもとに届いた「キャスティング詐欺」メール(※一部編集部で加工)

ドラマ・映画に出演させる見返りとして“別事業のサポート”を要求する「キャスティング詐欺」メールが、主にフリーランスで活動する俳優らの元に届いているとして、映画監督 是枝裕和氏の作品でプロデューサーを務める田口聖氏がSNSで注意を呼びかけている

俳優らの元に届いたメールの内容は以下(※個人名など一部編集)。

「私、是枝裕和監督、北野武監督、紀里谷和明監督や数々のCMのキャスティングディレクターとして勤めてまいりましたNと申します。

Twitter(X)の投稿を拝見してとても興味を持ったのでご連絡致しました。少し変なご依頼になってしまうのですが、最後までお聞き下さい。

現在、是枝裕和監督の次作Netflixドラマのキャスティングをプロデューサーより任されております。

そこで〇〇様をキャスティングする代わりに弊社の別事業をサポートしていただき、そのお礼にサブメインキャストとしてキャスティングしたいと考えているのですがご興味ありますか?

プロデューサーの一存で決定しているため、くれぐれも内密にしていただきたいのですが、サポートのお礼という形で了承していただけるのであれば、別事業の業務内容についてお話したいのですが、〇〇様はメルカリやヤフオクをご利用されたことはありますでしょうか?…」

「キャスティングを任されている」は真っ赤な“ウソ”

著名監督らの名前が華々しく並ぶメール文面だが、是枝裕和監督のドラマにキャスティングする見返りとして“別事業のサポート”を要求していることがわかる。8月上旬に是枝裕和監督の元にメールが出回っているという情報が寄せられ、田口氏らプロデューサー陣も事態を把握したという。

田口氏は「メールの送り主が何を目的にしているかはわかりません。ただ、『別事業をサポートするお礼にキャスティングします』と書いてありますが、映画やドラマのキャスティングで見返りを求めることはありません。そして、メールの差出人(N)は是枝監督のプロデューサーに『キャスティングを任されている』と言っていますが、私たちプロデューサー陣はNという人を知りません」と、穏やかな口調に怒りをにじませる。

「昨今、映像業界はハラスメント事例が多く発覚したり、長時間労働などが問題になっています。業界が一丸となって、働く環境を改善していこうとしている最中で、こうした業界のイメージを悪くするような、明らかに悪意を持った行為をする人がいることに、本当に怒りを感じています」(田口氏)

すでに警察には通報済みだが、田口氏らは「何か起こってからでは遅い」と8月5日にX(Twitter)上にメールの文面を公開したという。

メールがどの程度出回っているのか、実際にだまされた人がいるのかはわかっていないというが、田口氏は「X(Twitter)上でメールを公開したところ、『私のところにもメールが来た』と反応されている人がいました」という。

見返り要求しない

今後、違う文面で類似の詐欺メール・メッセージが出回る可能性もある。著名監督の作品に出演させることを匂わせる「キャスティング詐欺」をどのように見抜けばいいのだろうか。

実際のキャスティングと今回の“偽メール”の内容の相違点について、田口氏は次のように説明する。

「先にもお伝えした通り、そもそもキャスティングの見返りとして何かを要求することはありません。『プロデューサーの一存で決定しているので、内密に』という部分もおかしいです。映画やドラマの出演者というのは、監督も含めて大勢が関わって決めるもので、誰かの一存で決めるなんて僕の周りでは聞いたことがないです。

また、SNSを通じてエキストラの募集をする事はあっても、キャスティングの依頼をすることは基本的にはありませんので、SNSでメッセージを受け取った人は気を付けてほしいですね。被害を受ける人が出ないでほしいと切実に思っています」(田口氏)

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