夜しか開店しないパン屋さん

ちょっと変わったパン屋さんの話題です。JR田町駅近くの路地裏で夕方からオープンする、その名も「夜のパン屋さん」。こちら、「パンを焼かないパン屋」ということなんです。いったいどういうことなんでしょうか?

夕暮れのオフィス街、その一角でライトに照らされた一台のワゴン。こちら、夕方以降にしか営業しない「夜のパン屋さん」。この人気のパン、実は…ほかの店で売れ残ったものなんです。

夜のパン屋さん 光枝さん:「これは下北沢のパン屋さんなんですけど、カレーパンがめっちゃ美味しいんですよ」

取り扱うパンはすべて別の店で焼かれたもので、売れ残りを捨ててしまうのではなく、自分たちが預かって最後まで売ろうという、まさに「パンを焼かないパン屋さん」です。

光枝さん:「街のパン屋さんが頑張って作っているパンが、自分たちの店で売り切れなかったタイミングで預かって、代理販売させてもらう形のパン屋」

店には都内を中心に全国25の協力店舗から売れ残ったパンが届きます。中には北海道や三重から冷凍で届くものも。「パンを焼かないパン屋さん」にお客さんは…

「馴染みのないパン屋さんのパンを買えて、カードも入っているので、いいところだと後で行ってみようかなって」「行ったことない場所のパン屋さん試せるのが楽しいなって」

そんな「夜のパン屋さん」には、ある強いこだわりがあります。

光枝さん:「完全に屋外での販売なので天気に左右されるが、基本的には完売。パンを絶対に誰かのおなかに届けるというのを取り組みの一つに」

完売とならなかった場合には一度パンを事務所に持ち帰り冷凍。週末にまとめて子ども食堂などに持っていくことで、絶対に廃棄することがないようになっています。

フードロス削減に取り組む「夜のパン屋さん」。別の社会課題にも向き合っています。それが…

光枝さん:「日中はビッグイシューで雑誌の販売をしていて、夜になるとパンの販売に変わる人もいる。ほぼ全員二足のわらじで夜のパン屋さんを楽しんでいる」

店はホームレスや生活困窮者の支援を行う「ビッグイシュー」が運営を行っていて、生活困窮者だけでなく、長時間働くことが難しいひとに向けても労働の場を提供しています。パンの売り上げは半分が協力店舗に、そして残りの半分で従業員の給料や交通費をまかなっています。

2つの社会課題の解決に取り組む「夜のパン屋さん」。担当者は気軽に店を訪れて欲しいと話します。

光枝さん:「簡単な窓口だと思う。普通に美味しいパンが25店舗分並んでいて、そういう楽しみが優先で来てもらえれば全然良くて、是非パンを選びに来てほしいなって」

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