AI翻訳技術でマンガの多言語配信を効率化 集英社、『ONE PIECE』『SPY×FAMILY』などのベトナム語版を同時配信可能に

日本のマンガが世界中で人気を博しているが、円滑に海外配信を行う上で翻訳における作業効率化が長らく課題としてあげられる。こうした課題への対応の一策として、マンガに特化したAI翻訳技術の研究開発を手掛けるMantra株式会社と集英社がコミックアプリ「MANGA Plus by SHUEISHA」による最新話の多言語サイマル配信の支援を発表した。

Mantra株式会社は、7月24日から『ONE PIECE』や『SPY✖️FAMILY』などの最新話を、日本語と同時にベトナム語版を『MANGA Plus by SHUEISHA』で配信している。これにより、世界中のマンガファンが迅速に最新情報にアクセスできる環境が整備されたとしている。

今回サイマル配信を実現するのはMantra株式会社が提供する「Mantra Engine」。AIとプロの翻訳者の協力により、高速で高品質な翻訳を実現するクラウドサービスとして月間約5万ページ(単行本換算で毎月250~300冊分)のマンガ/コミックが翻訳されている。日本語や英語、中国語などの言語に対応し、最近のアップデートでは大規模言語モデル(LLM)を導入するなど、翻訳の正確性と一貫性の向上に取り組んでいる。

元来、マンガの翻訳と配信には高度な技術が求められ、作品の独自の世界観を保ちつつ、読者が没入できるような美しい翻訳が求められる。さらに、複数言語でのサイマル配信では、短期間で高品質な翻訳を実現する必要がることから、これまでの課題は、世界中のマンガファンに一斉に楽しみを提供する難しさを生んでいた。

この新しい技術の導入により、ベトナム語を含む多言語でのマンガ翻訳が大幅に改善され、翻訳の誤りは従来の10分の1程度にまで削減されたことで、キャラクターやストーリーの情報を考慮した翻訳が可能になったという。

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