インド月探査機が推進モジュールの分離に成功 着陸は8月23日の予定 チャンドラヤーン3号続報

インド宇宙研究機関(ISRO)は8月17日、2023年7月に打ち上げられた月探査ミッション「チャンドラヤーン3号(Chandrayaan-3)」の探査機について、ランダー(着陸船)から推進モジュールを分離することに成功したと発表しました。成功すればインド初となる月面着陸は2023年8月23日に予定されています。【2023年8月18日10時】

【▲ 打ち上げ準備中に撮影されたチャンドラヤーン3号のランダー(着陸機)。内部にローバー(探査車)が収納されている(Credit: ISRO)】

チャンドラヤーン3号はISROによる3回目の月探査ミッションです。探査機は月面に着陸するランダー、ランダーに搭載されているローバー(探査車)、着陸前までの飛行を担う推進モジュールで構成されていて、ランダーには地震計(月震計)など3基、ローバーにはX線分光器など2基の観測装置が搭載されています。着陸予定地点は月の表側の南緯70度付近です。

【▲ チャンドラヤーン3号のランダー(着陸機)とローバー(探査車)(Credit: ISRO)】

ISROは2019年にオービター(月周回衛星)、ランダー、ローバーで構成された月探査ミッション「チャンドラヤーン2号」の探査機を打ち上げましたが、月周回軌道への投入には成功したものの、ランダーの着陸には失敗しており、今回はインドにとって2回目の月面着陸挑戦となります。なお、チャンドラヤーン2号のオービターは現在も運用が続いていて、チャンドラヤーン3号の着陸機との通信の中継に用いられます。

2023年7月14日に打ち上げられて地球を周回する軌道に投入されたチャンドラヤーン3号は、日本時間2023年8月1日未明に月へ向かう軌道(月遷移軌道)へ投入するための噴射(Trans Lunar Injection:TLI)に成功。日本時間2023年8月5日夜には月周回軌道へ投入するためのエンジン噴射(Lunar Orbit Insertion:LOI)が実施され、高度164km×1万8074kmの楕円軌道へ投入されました。その後は8月16日までに4回の軌道修正噴射が行われ、高度153×163kmの軌道に到達していました。

関連:インドの月探査機から月面を撮影した動画が公開 チャンドラヤーン3号続報(2023年8月9日)

【▲ 2023年8月5日にチャンドラヤーン3号の探査機から撮影された月面の様子。ISROが公開した動画から引用(Credit: ISRO)】

ISROによると、日本時間2023年8月17日16時45分頃、ランダーの下部に結合していた推進モジュールが分離されました。LVM3ロケットから分離されて以降、月周回軌道までの飛行を担ってきた推進モジュールが分離されたことで、ミッションはいよいよ最終段階の軌道修正と月面着陸に進みます。成功すればインド初となるチャンドラヤーン3号のランダーによる月面着陸は、2023年8月23日に予定されています。

【▲ 打ち上げ準備中に撮影されたチャンドラヤーン3号の探査機。ランダー(上)と推進モジュール(下)が結合された状態(Credit: ISRO)】

いっぽう、分離された推進モジュールはその後も月周回軌道に留まり、搭載されている偏光分光観測装置「SHAPE(Spectro-polarimetry of HAbitable Planet Earth)」を用いた実験が行われる予定です。ISROによると、SHAPEは太陽系外惑星の生命居住可能性や生命そのものの兆候を探索する将来の調査に備えて、地球の大気の分光観測や雲からの偏光の変化を測定するということです。

【▲ チャンドラヤーン3号の推進モジュール分離成功を伝えたISROのX(旧Twitter)公式アカウントの投稿】

なお、チャンドラヤーン3号の月面着陸予定日の2日前となる2023年8月21日には、ロシアの月探査機「ルナ25号(Luna 25)」による月面着陸が予定されています。また、2023年8月26日には日本の小型月着陸実証機「SLIM(スリム)」とX線分光撮像衛星「XRISM(クリズム)」を搭載した「H-IIA」ロケット47号機が打ち上げられる予定です。

Source

  • Image Credit: ISRO
  • ISRO \- Chandrayaan-3
  • ISRO (X, fka Twitter)

文/sorae編集部

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