上り調子のDOCOMO TEAM DANDELION RACINGは第7戦もてぎでも“台風の目”となるか「問題はこの暑さ」

 8月18日、全日本スーパーフォーミュラ選手権は、第7戦の搬入日を迎えた。栃木県のモビリティリゾートもてぎでは、猛暑のなかで翌日からの走行に備えてピット設営・マシンの整備等が行われた。7月に行われた前戦富士は、比較的涼しいコンディションでのレースとなったが、今週末は土日とも引き続き高温が予報されており、今季最も暑いコンディションで予選・決勝が行われることとなりそうだ。

 1ポイント差で迎えた宮田莉朋(VANTELIN TEAM TOM’S)とリアム・ローソン(TEAM MUGEN)のランキング上位2名の争いも気になるが、そんなタイトル戦線を“かき回す”存在として予期されるのが、前戦富士で予選1・3番手を獲得する速さを見せ、決勝でも牧野任祐が表彰台を得たDOCOMO TEAM DANDELION RACINGだ。

■牧野任祐「もてぎでも“効く”ポイントはある」

 富士でポールポジションを獲得した牧野は、レースではピット作業後にリアム・ローソン(TEAM MUGEN)の先行を許し、悔しい2位。しかし、マシンのセットアップは第6戦の前に行われた富士での2日間のテスト以来、飛躍的に向上したという。

「何が良かったのか、と言われても、もうすべてが違うレベルで(以前とは)異なっています。テストではもう、“ここ!”というのが正直分からないくらいのレベルでガチャガチャとやったので、それの全部が良かったのかもしれません」

 今季導入された新型車両SF23は、狭いスイートスポットを見つけ出し、そのピークのところで走らせる必要があるとされているが、牧野は「そこが、前までは僕らはちょっと外れていたんだろうなと思います。いまは『SF23で大事なポイントは、なんとなくここだろうな』というのが見つかった感じ」だという。

 富士の決勝ではポジションを下げてしまったものの、決勝のマシンの状態は「いままでで一番良かったですね」と牧野は振り返る。ここ数年課題を抱えてきたロングラン性能が安定していただけでなく、「セクター3がもともとすごく遅かったのですが、レース中のラップタイムではリアムともそれほど変わりませんでしたから、そこはかなり大きな収穫だったなと思います」。

 コース特性がやや異なる富士ともてぎだが、「もてぎでも“効く”ポイントはあると思っています」と牧野は自信も覗かせる。

「ただ、問題はこの暑さなんですよね。富士はテストもレースも想定よりも低い路気温だったので、この暑さでどうなるかはちょっと心配ではあるのですが、チームとしてはだいぶ良くなったことは実感できているので、それが今回も継続してくれたらいいなと思っています」

■「乗りこなせている感」が100%に近づく太田格之進

 一方、チームメイトのルーキー・太田格之進も、いままさに上り調子だ。前戦富士の予選ではQ1・B組をトップ通過してQ2で3番手を獲得、決勝ではスタートに失敗して6位でレースを終えたものの、スーパーフォーミュラ初得点を手にした。さらに2週間前のスーパーGT第4戦では、2位表彰台も獲得している。

 オフシーズンのGT500のテストで負傷、シーズン前のスーパーフォーミュラ鈴鹿テストを欠席しなくてはならないところから始まった太田の2023シーズンだったが、6月の富士テストでようやくしっかりと走り込めたこともあって、好調の波が訪れているようだ。

「SFはホンマによく分からなくて、前のラウンドで調子良かったところ(陣営)が悪くなったりしますから、一概には言えないとは思いますけど、富士で良かったセットアップはここ(もてぎ)でも反映できると思います。牧野選手含め、チームとしてマシンのスイートスポットを見つけ始められていると思いますし、ポジティブな形でレースウイークに入れていますね」と、どことなく肩の荷が下りたような雰囲気でもてぎ入りした太田は語る。

「やっぱりテストでいろいろと組み立て、試しながら走るということができて、僕らルーキーもある程度イコールというか、慣熟した状態で走れたのがこの前(第6戦富士)の予選だったと思うし、そこで前にいけたことで、“乗りこなせている感”はかなり100%に近づけていると思います」

 テスト、レースウイークと好調だった富士から舞台が変わることになるのは牧野と同じだが、太田にとってはスーパーフォーミュラのマシンでもてぎを走るのは予選日が初。フリープラクティスでは、マシンのセットアップも気にしつつ、SF23で走るコースへの慣熟も重要だ。

「ここはハードブレーキするポイントが多い。コーナーによっては極限まで奥に行きたいですが、練習でも1セットか2セットしかニュータイヤを履けないなかで、予選のアタックで本当に適切なポジションでブレーキを踏めるか。そういったところは、300km/h近いスピードからブレーキングするぶん、難しさはあるだろうなと想像しています」

 富士では「あ、俺乗れてきてるな」という感覚があったという太田。いち早くSF23で走るもてぎに慣れ、前戦で手にした“感覚”を再現したいところだろう。

「僕らスポーツ選手は“流れ”が大事だと思いますし、その流れがいまは上向きなので、ここでもそれに乗っていきたいところです。残り2大会ですし、ここらで一発、表彰台に乗りたいですね」

 注目のスーパーフォーミュラ第7戦、土曜フリー走行は8月19日の9時20分に始まる予定だ。その後、14時50分からノックダウン式の予選が行われる。

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