来季RSCでSVG後任の初代王者ウィル・ブラウンが予選最速からの連勝劇/TCRオーストラリア第4戦

 豪州大陸はクイーンズランド・レースウェイにて8月11~13日に開催されたTCRオーストラリア・シリーズ第4戦は、この会期直後に地元最高峰シリーズにおいて来季トップチームへの移籍がアナウンスされた初代王者ウィル・ブラウン(メルボルン・パフォーマンス・センター/アウディRS3 LMS 2)が、予選ポールポジション獲得から3戦2勝と圧巻のパフォーマンスで快勝。レース2では新鋭ブラッド・ハリス(エクスクルーシブ・スイッチボード/FK8型ホンダ・シビック・タイプR TCR)がシリーズ初優勝を飾っている。

 前戦6月初旬のウイントンでは、新規導入2戦目を予定していたリンク&コー03 TCRの部品供給に問題を抱えたため、長年走らせてきたアルファロメオ・ジュリエッタ・ヴェローチェTCRを引っ張り出す状況に陥っていたアシュリー・シュワード・モータースポーツ(ASM)だが、その“旧車”で勝利を挙げていた元BTCCイギリス・ツーリングカー選手権ドライバーのトム・オリファントが、今回は婚約者のジュヌヴィエーブと挙式するため英国にトンボ帰り。その代打として、チームは豪州大陸を代表するRSCレプコ・スーパーカー・チャンピオンシップの経験者であるティム・スレイドを起用するとアナウンスした。

「クイーンズランドのレースを欠場するのは残念だが、人生においてこれ以上の理由はない。モータースポーツのキャリア全体を通じて僕をサポートしてくれ、13年間の付き合いになるガールフレンドと結婚するためイギリスに滞在することになる」と語ったオリファント。

「ASMとオートグリムは素晴らしい後任を見つけたし、クイーンズランドでの幸運を祈っている。もちろん僕も戻ってきて、次の勝利を掴むため9月のサンダウンでは懸命に努力するつもりだ」

 一方、昨季まで複数年、複数チームにまたがってRSCのレギュラーを務め、同じく2022年のバサースト戦でTCRデビューも果たしたスレイドは、直近に同地でのテストも済ませたリンク&コー03 TCRで初の実戦に挑む。

「完成度の高いリンク&コーでのテストデイと、クルマの準備やセットアップ面に関してとても熱心なアシュリー・シュワード(代表)との作業は本当に楽しかったよ」と、最初の感触を明かしたスレイド。

「このブランドはツーリングカーでかなり良い歴史を築いており、ヨーロッパでは非常に成功を収めている。僕の限られたTCR経験からしても、これは今までドライブした中で最も楽しいTCR車両だね」

「数年前にアッシュのアルファをテストし、バサーストではホンダでレースに出場したが、それらと比較するとリンク&コーは通常のリヤ駆動モデルに最も近いドライビングが可能だ。スーパーカーでは年間2〜3日しかテストがないし、他のカテゴリーでシートタイムを見つけるのは有益なんだ。この機会を与えてくれた全員に深く感謝している」

地元イギリスで挙式のトム・オリファントに代わり、ティム・スレイド(アシュリー・シュワード・モータースポーツ/リンク&コー03 TCR)が起用された
レース1では好調ブラウンが、王者トニー・ダルベルト(ウォール・レーシング/FK8型ホンダ・シビック・タイプR TCR)とのチャンピオン対決を制した
2戦前の新車投入の1戦ではデビューウインも飾ったマイケル・クレメンテ(カール・コックス・モータースポーツ/クプラ・レオン・コンペティションTCR)は、レース2のスタートで先行する

■レース2ではリバースポールの新鋭ハリスが主役に

 一方で、同じく前戦を“NASCAR視察”のため欠場していた初代チャンピオンのブラウンは、プラクティスからひさびさのアウディで好調を維持すると「ウイントンの欠場は残念だったが、TCRの世界ランキングを上げるため、できる限り多くのポイントを獲得したい。そのためにも残り4ラウンドで強くなって戻ってくるつもりだ」と語っていた言葉どおり、選手権首位のベイリー・スウィーニー(HMOカスタマー・レーシング/ヒョンデi30 N TCR)やスレイドのリンク&コーを退け、まずは予選最速タイムを刻んでみせた。

 そのまま現地16時過ぎに始まったレース1では、やはり誰もブラウンを止められず。今季コカ・コーラ・バイ・エレバスのエントリー名でタイトル争いを繰り広げるRSCでの勢いと強さそのままに、トラブルでピットスタートを強いられたスウィーニーや、失速したスレイドらに代わり、背後に上がってきた王者トニー・ダルベルト(ウォール・レーシング/FK8型ホンダ・シビック・タイプR TCR)やザック・ソーター(チーム・ソーター・モータースポーツ/アウディRS3 LMS 2)ら、後続に10秒以上の差をつけての“ライト・トゥ・フラッグ”を決めてみせた。

 明けた日曜午後0時45分開始のレース2は、リバースポール発進となった新鋭ハリスが主役を演じることに。スタートこそマイケル・クレメンテ(カール・コックス・モータースポーツ/クプラ・レオン・コンペティションTCR)がターン1のホールショットを奪ったが、直後に反撃したハリスが接触バトルでポジションを奪還。

 その後も力強いレースペースを刻んだルーキーのシビックは、背後で重圧を掛け続けるアーロン・キャメロン(ギャリー・ロジャース・モータースポーツ/プジョー308 TCR)やブラウンのアウディを抑え切り、わずか0.5秒弱の差でTCRオーストラリア初優勝を果たした。

 続く最終ヒートのレース3は、ふたたび最前列から挑んだブラウンが主導権を握る展開となり、残り5周でコース上に停止したコディ・ガーランド(ギャリー・ロジャース・モータースポーツ/プジョー308 TCR)の車両回収でセーフティカーが導入されるも、残り1ラップスプリントも難なく制したアウディが週末の2勝目をマーク。スタートで2番手にジャンプアップしていたキャメロンと、レース中盤に王者とのシビック対決も制し、ふたたび力強いレースを披露したハリスの並ぶ表彰台となった。続くTCRオーストラリアの第5戦は、9月8~10日にサンダウンで開催される。

リバースの好機も活かしつつ、ブラッド・ハリス(エクスクルーシブ・スイッチボード/FK8型ホンダ・シビック・タイプR TCR/左)が自らのドライブで初勝利をたぐり寄せた
レース3は車両回収でセーフティカーが導入されるも、残り1ラップスプリントも難なく制したアウディが週末の2勝目をマーク
今季はトラブルやアクシデント、そして欠場によりランキングこそ振るわないが、初代王者が底力を披露した

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