ニューヨーク・屋敷さんが語る「半円チックな花火が上がり、船が猛ダッシュで逃げる」 人口2万の街に20万人が押し寄せカオスになる故郷・熊野の大花火大会

人口2万人の紀伊半島の町に10倍の人が訪れる熊野大花火大会。 ことしは4年ぶりにコロナ禍前の姿に戻って開催されます。

熊野市出身のお笑い芸人、ニューヨークの屋敷裕政さんが故郷の花火大会を熱く語りました。

紀伊半島の南部に位置する人口約2万人の三重県熊野市。世界遺産の「熊野古道」や巨大な獅子が海に向かって吠える姿をした「獅子岩」などが観光名所として知られる自然豊かな町です。

この町の夏の風物詩が、毎年8月17日に開催される「熊野大花火大会」。江戸時代から約300年続くと言われる伝統の花火で、舞台は世界遺産の「鬼ヶ城」や「熊野灘」に面した七里御浜(しちりみはま)海岸です。

伝統の花火も、新型コロナの影響で2019年の開催を最後に3年連続で中止に。去年(2022年)は「伝統花火存続のため」として、時期をずらした11月に規模を縮小して花火が打ち上げられましたが、新型コロナの規制が緩和されたことしは本来のシーズンである夏に打ち上げられることになりました。

当初8月17日に予定されていた花火は台風で延期に。8月22日、待ちに待った花火大会が開催されます。

この花火の見どころを、お笑い芸人「ニューヨーク」の2人(屋敷裕政さん、嶋佐和也さん)に教えてもらいました。ツッコミ担当の屋敷さんは、三重県熊野市出身で、祖父の家に集まって花火を見るのが恒例だったそうです。

(屋敷さん)
「熊野市というのは人口2万人を切るぐらい人口が本当に少ない。毎年、8月の熊野大花火大会の日だけは、日本中から人間が集まってきてその日のことを僕は東京と呼んでいた。『もうすぐ東京やわ』と」

人口約2万人の静かな町が、この日だけはその10倍にあたる約20万人が集まり、街は人であふれかえるのです。

これまで3年連続で中止になった夏の熊野大花火大会。もっとも気がかりなのは、花火師たちへの影響です。3年で4000万円もの収入がなくなったといいます。

(屋敷さん)
「一番のキラーコンテンツがコロナによって3年間ずっとなかったんですよ。花火がなかったらまじきついから、あの町」

(嶋佐さん)
「年に一回の花火だけを楽しみに。一大イベントとして楽しみながら生きている・・・」

(屋敷さん)
「いや、それだけじゃないけど。でも人があれだけ集まるのは、花火が最高だから」

「このままでは伝統の担い手がいなくなる」。

強い危機感を覚えた観光協会は、夏の花火大会に代わる花火を打ち上げようと、去年8月に市民から寄付を募りました。すると支援の手は、関東や九州、海の向こうからも差し伸べられ、寄付金は当初の目標を100万円大きく上回る1658万円が圧集まり、伝統存続のための打ち上げ花火の開催実現にこぎつけたのです。

そんな熊野の花火の“見どころ”を屋敷さんに教えてもらいました。

(屋敷さん)
「海上自爆。3尺玉っていう、日本でも一番でかいぐらいの花火。これを海の上で爆発させることによって、半円チックな花火が上がるんですよ。船がダッシュで逃げるの」

海上自爆とは、その名の通り海の上で爆発させる花火。

観覧席となる浜の目の前に広がる海に浮かぶ鉄製の“いかだ”にのせられた3尺玉に、船に乗ったスタッフが火をつけます。そして…

(アナウンス)
「ただ今、全速力で船が逃げております。全速力で船が逃げております」
「5、4、3、2、1」

(見物客)
「うわー!」

ズドーンという重い花火の音。3尺玉が破裂し、海の上に大きな半円を描いています。その直径はなんと600メートルに及びます。

浜に集まった大勢の人たちが大きな拍手を送ります。

屋敷さんにもう一つの見どころも聞いてみました。

(屋敷さん)
「鬼ヶ城大仕掛けというのがあるんですよ」

(嶋佐さん)
「鬼ヶ城」

(屋敷さん)
「世界遺産の鬼ヶ城というのがあるんですよ。普通の花火は上がって空で爆発するんだけど、鬼ヶ城らへんですごい爆発をしたりとか、放射状に出たりとか、普通の花火ではないタイプの花火がクライマックスで畳みかけてくるんですよ」

世界遺産の鬼ヶ城は、大地震で隆起した岩場が熊野灘の荒波に削られてできた国の天然記念物でもある名勝。長さ約1キロの間に、大小無数の洞窟が階段状に並んでいます。

花火が破裂した音は、この岩場で反響し、浜中にごう音が鳴り響くだけでなく見物客の体を振動させるのです。

(屋敷さん)
「浜で見たら、クラブのスピーカーが目の前にあるみたいで、火の粉が落ちてくるんじゃないか、という感じ」

(嶋佐さん)
「それはすごいな、それは見てみたいな」

(屋敷さん)
「見て欲しい一回」

4年ぶりに本来の姿に戻って開催される2023年の熊野大花火大会は、台風による延期を乗り越えて8月22日(火)に開催されます。

© CBCテレビ