《関東大震災100年》茨城県内災害記録を公開 県立歴史館 「経験生かす一助に」

写真や行政資料などを説明する県立歴史館の長谷川拓也さん=水戸市緑町

関東大震災から100年の節目に合わせ、茨城県立歴史館(同県水戸市)は19日から、大震災の被害と県内の自然災害を記録した古文書、行政資料を公開する。同館所蔵の一橋徳川家文書のほか、県内各地の写真や教育資料などを展示する。担当者は「先人が自然災害とどう向き合ってきたか、改めて考える機会にしたい」と話している。

展示は、同館が収蔵する行政文書や古文書、和書などの資料を広く活用する事業の一環。約40点の資料や写真を通し、保存や継承の大切さにも目を向けてもらうのが狙い。同館が自然災害をテーマとする展示に取り組むのは初めて。

1923年9月1日に発生した関東大震災は、首都圏を中心に甚大な被害をもたらし、死者・行方不明者は約10万人を超えた。

当時、東京・文京区に住んでいた一橋徳川家の家扶(かふ)(職員)の日記には「朝風雨昼晴、正午大地震大火トナル」と記され、当主の達道(さとみち)らが内庭に避難したことなどが記録されている。

大震災発生時の県内の記録では、笠間や鹿嶋の小学校の校務日誌や沿革誌の一部を紹介する。義援金募集や救護団の編成、慰問袋の発送などについての記述があり、当時の災害対応や被害者支援の様子を知ることができる。

1910年から60年代にかけて起きた県内の自然災害を巡る資料は、いずれも豪雨による浸水や落橋など被害の大きさを具体的に伝える。

県広報広聴課が記録した水戸市や土浦市、境町の写真や、県土木部が撮影した47年のカスリーン台風襲来直後の水戸市内の写真が公開される。

このほか、被災した資料を保全するボランティア活動を解説するパネル類や、2015年9月の常総水害で被災した常総市内の小学校の職員、保護者、児童らの記録も展示。「語り続け、忘れてはならない」「日頃の備えが大切」などといった当事者の声が紹介されている。

同館行政資料課長の長谷川拓也さんは「今後も発生する自然災害に対し、経験を生かして私たちがどう対応するのか考える一助にしたい」と話した。

会期は10月29日まで。

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